続けているうちに、歯の面は明るくなってきた。ところが歯ぐきに近い部分だけが濃いままで、かえって差が目立つようになった。
この状態になると、「効いていないのではないか」という解釈に傾きます。そこから、もっと濃いジェルに変えられないか、もっと長く着けられないかという方向に進みたくなります。
ただ、面が明るくなっているのであれば、薬剤は働いています。残っているのは、働かなかった場所ではなく、届かなかった場所かもしれません。
ここでは、なぜ根元に届きにくいのかを3つに分けて整理します。そして、濃度を上げる方向が逆効果になる理由も含めて見ていきます。
根元が残るのは、薬剤の力不足ではない
まず、状況の読み方を変えておきます。
歯の面が明るくなっているなら、その薬剤はその濃度と時間で、あなたの歯に対して働いています。力が足りていないなら、面のほうも変わらないはずです。
面は変わり、根元は変わらない。この差が意味しているのは、同じ薬剤が、場所によって違う条件に置かれているということです。
この見方に切り替えると、確認する先が変わります。「薬剤をどう強くするか」ではなく、「なぜそこには届かないのか」を見ることになります。理由は3つあります。
届かない理由① マウスピースの縁は、歯ぐきの手前で止まっている
まず、道具の側の理由です。ここは見落とされやすい部分です。
縁は、歯ぐきに薬剤が付かないよう設計されている
ホームホワイトニング用のマウスピースは、歯の形に合わせて作られますが、縁をどこまで伸ばすかは設計事項です。薬剤が歯ぐきに触れると、痛みや炎症につながることがあるためです。
そのため、縁を歯ぐきの手前で止めるという作り方があります。この場合、歯ぐきに接している数ミリの範囲には、薬剤がほとんど触れません。
そして、縁の設計は濃度とセットで決まっている
ここからが、押さえておきたい関係です。
マウスピースのデザインは、使うジェルの濃度によって変わります。
一般に、次のような対応になるとされています。
濃度が低い場合(5〜10%程度)。 歯ぐきのラインぎりぎりまで、あるいは歯ぐきを覆う形にすることがあります。歯ぐきぎりぎりまで作用させても差し支えないためです。
濃度が中程度の場合(15〜16%程度)。 原則として、歯ぐきのラインに沿った形にします。
濃度が高い場合(20%以上)。 歯ぐきに付かないようにデザインされます。高い濃度の薬剤が歯ぐきに付くと、痛みが出たり、歯ぐきが下がったりする可能性があるためです。
つまり、「濃いジェルにすれば根元も」は逆方向
この対応を並べると、意図しない結論が出てきます。
濃度を上げるほど、マウスピースの縁は歯ぐきから離れる方向に設計されます。
つまり、根元を明るくしたくて濃いジェルに変えると、薬剤が触れる範囲はむしろ狭くなるということになります。強くすれば届く、という関係になっていません。
濃度と時間がセットで設計されている理由については「ホームホワイトニングのジェルとは?成分と濃度の考え方、入手経路の見分け方」で扱っています。マウスピースの縁も、この設計の一部だということです。
なお、ここに挙げた数値は一般的な対応の目安です。手元のジェルとマウスピースがどの組み合わせなのかは、渡してくれた歯科医院で確認してください。
届かない理由② 歯ぐきが下がって露出した部分
2つ目は、歯の側の理由です。
歯ぐきが下がると、それまで隠れていた部分が見えるようになります。この部分は、エナメル質に覆われていません。
歯の頭の部分はエナメル質で覆われていますが、歯ぐきの中に入っている部分は違う組織でできています。そこが露出すると、もともと色が濃く見えます。しかも、薬剤の効き方も歯の面とは変わってきます。
加えて、この部分は刺激が伝わりやすい場所でもあります。しみやすさが出るのもここからです。仕組みについては「ホワイトニングで歯がしみるのはなぜ?仕組みと、症状が出たときの対処」で整理しています。
この部分は「明るくなりにくい場所」として扱うのが実際的です。ここを目標に据えると、達成できない目標を追い続けることになります。
下がる方向を止めるほうが先になる
もうひとつ押さえておきたいのが、露出は進む可能性があるという点です。歯ぐきが下がる要因として挙げられるのは、加齢による変化、歯周病、そして強い力でのブラッシングです。
このうち、自分の側で変えられるのは3つ目です。根元の色を気にして強く磨いていると、その行為自体が露出を広げる方向に働きます。色を追いかけるほど、明るくなりにくい面積が増えるという形になります。
だから、この場合に先に来るのは「どう明るくするか」ではなく、下がる方向を止めることです。磨き方は、診てもらえばその場で見てもらえる項目です。
届かない理由③ 歯石や着色が層になっている
3つ目は、途中に何かがある場合です。
歯ぐきに近い部分は、歯石が付きやすい場所です。歯ブラシが届きにくく、唾液の成分も関わるためです。
歯石や着色が層になっていると、薬剤は歯の表面にたどり着けません。この状態では、濃度を上げても時間を延ばしても、間にあるものが先に相手になります。
この点については「ホームホワイトニングで白くならないのはなぜ?原因の切り分け方と確認の順序」で扱っています。また、歯石の表面がざらついていて着色の足場になることについては「歯の黄ばみを取る方法は?取れる黄ばみと取れない黄ばみの見分け方」で整理しています。
根元の色が「歯の色」ではなく「付いているもの」である可能性は、先に外しておく価値があります。
対処は「濃度を上げる」ではなく「届く状態を作る」
3つの理由が分かると、取れる手も決まります。どれも、強くする方向ではありません。
① 先に清掃を済ませる
③に当たる場合、これで解決します。しかも順序として先に来ます。付いているものを取ってから、そこが本当に濃いのかを見直すという流れです。
② マウスピースの縁について相談する
①に当たる場合、縁の設計を見直せる可能性があります。ただし前述のとおり、縁は濃度とセットで決まっています。濃度を下げて縁を歯ぐき寄りにするという組み替えが成り立つ場合もあれば、しみやすさから難しい場合もあります。
いずれにしても、自分で判断して変えられる部分ではありません。「根元が残っている」と伝えたうえで、設計の話として相談する形になります。
伝え方としては、「歯の面は明るくなったが、歯ぐきに近いところだけ変わっていない」と分けて言うのが有効です。効いていないという言い方をすると濃度や期間の話になりますが、場所で分けて伝えれば、縁の設計と清掃の状態のほうに話が向きます。
③ 医院での施術を組み合わせる
ここに、ホームとは違う性質があります。歯科医院での施術では、薬剤を塗るのが術者です。マウスピースの縁という制約がないため、塗る範囲を歯ぐきの際まで調整できます。歯ぐきは保護材で覆ったうえで行われます。
つまり、根元が課題である場合、医院での施術を組み合わせる理由が具体的にあるということです。両方を使う進め方については「デュアルホワイトニングとは?進め方の順序・期間・費用の内訳を解説」で整理しています。
④ 露出した部分は、目標から外す
②に当たる場合は、期待の置き場所を変えるのが現実的です。そこが変わらないことを前提に、歯の面をどこまで明るくするかを決めます。
差が気になる場合は、明るくする以外の方向(表面を覆う処置など)が検討対象になります。これは色の話とは別の相談になります。
やってはいけない対処
逆に、根元を何とかしようとして取りがちで、状況を悪くする方向の手があります。
ジェルを多く入れて、縁からあふれさせる。 届かないなら量を増やせばいい、という発想です。あふれた薬剤は歯ぐきに触れます。歯ぐきが一時的に白くなったり、ひりつくような刺激感が出たりします。漏れた薬剤は歯ぐきや喉に炎症を起こすこともあります。
装着時間を延ばす。 触れていない場所は、時間を延ばしても触れません。増えるのは負担のほうです。この関係については「ホワイトニングのやりすぎとは?回数では決まらない理由と、自分で確かめる3つの軸」で扱っています。
マウスピースを自分で削る、市販の材料で作り直す。 縁を伸ばそうとして自分で加工すると、歯に沿わなくなります。沿っていないマウスピースからは薬剤が漏れ、歯ぐきが痛む原因になります。
研磨力の強いもので根元をこする。 根元は、削れやすい場所です。表面が減ると内側の色がさらに透けるため、明るくしようとして濃くなるという結果になります。この仕組みについては「歯の黄ばみを取る方法は?取れる黄ばみと取れない黄ばみの見分け方」で扱っています。
よくある質問
根元だけ濃度の高いジェルを使えませんか?
部分ごとに濃度を変えるという使い方は想定されていません。加えて前述のとおり、濃度が上がるほどマウスピースの縁は歯ぐきから離す設計になるため、根元に届く方向とは逆に進みます。相談する場合は、濃度ではなく設計の話として持ち込むほうが噛み合います。
マウスピースを作り直せば届きますか?
縁の位置を変える余地はありますが、使うジェルの濃度との組み合わせで決まります。また、歯ぐきの状態によっては覆う設計にできないこともあります。作り直しが必要かどうかも含めて、状態を見てもらったうえでの判断になります。
歯ぐきが下がっているかどうかは自分で分かりますか?
歯が長く見えるようになった、歯と歯のあいだに隙間ができた、冷たいものがしみるようになった。こうした変化があれば可能性があります。ただし進み方はゆるやかなので、自分では気づきにくい部分です。診てもらえば分かります。
根元が黄色いのは虫歯ではありませんか?
歯ぐきに近い部分は、むし歯が起こりやすい場所でもあります。色だけでは区別が付かないため、続ける前に一度見てもらうのが確実です。むし歯がある状態で薬剤を使うと、しみたり痛みが出たりすることがあります。
根元だけ後から追いついてきますか?
届いていない場合、続けても追いつきません。時間の問題ではなく、条件の問題だからです。同じ進め方をどれだけ続けても、変わるのは面のほうだけという結果になります。差が広がっていると感じたら、そこが確認の合図です。
まとめ
根元だけ残るとき、薬剤の力が足りないとは限りません。歯の面が明るくなっているなら薬剤は働いており、残っているのは届かなかった場所です。
届かない理由は3つあります。①マウスピースの縁が歯ぐきの手前で止まっている ②歯ぐきが下がって露出した部分にはエナメル質がない ③歯石や着色が層になっている。
とくに①には、押さえておきたい関係があります。マウスピースの縁の設計は、ジェルの濃度とセットで決まっています。濃度が高いほど歯ぐきに付いたときの影響が大きいため、縁は歯ぐきから離す設計になります。つまり「濃いジェルにすれば根元も白くなる」は方向が逆です。
対処は、強くする方向ではなく届く状態を作る方向になります。先に清掃を済ませる、縁の設計を相談する、術者が塗る医院の施術を組み合わせる、露出した部分は目標から外す。
逆に、ジェルを増やしてあふれさせる・時間を延ばす・自分で削る・強くこするといった対処は、届かない状態を変えないまま負担だけを増やします。
大阪梅田矯正歯科のホワイトニング
通院の負担を抑えたい方に向けて、オンライン診療と自宅でのケアで進めるホワイトニングをご用意しています。3Dスキャンで採得した歯型からオーダーメイドのマウスピースを作成し、歯科医師の診断のもとでホワイトニング剤と知覚過敏抑制剤をお届けします。
- 診察はオンラインで完結。マウスピースをお持ちの方は来院いただく必要がありません
- 歯型に合わせたオーダーメイドのマウスピースで、薬剤を歯の隅々まで行き渡らせます
- しみる症状に備えた知覚過敏抑制剤を同梱。経過はLINEでご相談いただけます
※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。
・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります



