ホワイトニングを受けた後、冷たい飲み物でキーンとしみる。一過性だと聞いてはいるものの、いつまでが一過性なのかが分からないまま日数が過ぎていく。歯が傷んでしまったのではないか、次の施術はどうすればいいのか。判断がつかず、待つことも動くこともできない状態になりがちです。
先に結論を書いておくと、この症状は歯の構造が失われて起きているものではありません。薬剤が作用しているのは歯の色素であって、歯を削ったり溶かしたりしているわけではないためです。
ここでは、なぜしみるのかという仕組みから始めて、症状が出る時期と治まる目安、しみているあいだの過ごし方、そして受診を考えたほうがよい状態までを整理します。
しみるのは、刺激が神経に届きやすくなっているため
まず、歯の内部で何が起きているのかを見ていきます。
刺激が神経に伝わる経路
歯の内側にある象牙質には、象牙細管と呼ばれる細い管が無数に通っています。この管は歯の神経(歯髄)につながっており、外からの刺激を伝える通り道になっています。
普段はこの象牙質がエナメル質に覆われているため、冷たいものに触れても刺激は神経まで届きにくくなっています。冷たい水を飲んでも何も感じないのは、この構造があるからです。
ホワイトニング中に起きていること
ホワイトニングで使われる過酸化水素は、エナメル質を通過して象牙質まで作用します。歯の内部にある色素に届く必要があるため、表面で止まるものではありません。
このとき、歯の内部の水分バランスが一時的に変化したり、象牙細管が開いた状態になったりすることがあります。普段は届きにくかった刺激が、通りやすくなるということです。
その結果、冷たいもの、甘いもの、あるいは風が当たっただけでも、普段より刺激が伝わりやすい状態になります。これがしみるという感覚の正体です。
歯が削れているわけではない
ここが不安になりやすいところですが、歯の構造が失われているわけではありません。
薬剤が作用しているのは色素であって、歯そのものを削ったり溶かしたりする働きは持っていません。強く磨いてエナメル質を摩耗させた場合とは、起きていることが違います。
そして、変化した象牙細管の状態は時間の経過とともに戻っていきます。症状が一過性であることが多いのは、この回復があるためです。
人によって出方が違うのはなぜか
同じ施術を受けても、まったく感じない人と数日続く人がいます。この差は我慢強さの違いではなく、歯の状態の違いから生まれます。
エナメル質の厚み。 覆っている層が薄いほど、薬剤は象牙質に届きやすくなります。厚みには生まれつきの差があり、長年の磨き方によっても変わります。
エナメル質の細かなひび。 目に見えない程度のひびがあると、そこから薬剤が届きやすくなります。
歯ぐきの位置。 歯ぐきが下がって歯の根元が出ている部分は、もともと刺激を受けやすい状態にあります。
神経の状態。 歯髄がどのくらい反応しやすいかにも個人差があります。
つまり、しみるかどうかは始める前の歯の状態にかなり左右されます。事前に確認してもらうことで、出やすい条件があるかどうかは把握できます。
もともとの知覚過敏と、ホワイトニングによるしみるは別のもの
「知覚過敏」という同じ言葉で語られますが、この2つは原因が違います。
刺激が伝わる経路は同じです。どちらも象牙細管を通って神経に届きます。しかし、なぜ届きやすくなっているのかという理由が異なります。
もともとの知覚過敏は、象牙質が露出していることによるものです。歯ぐきが下がって歯の根元が出ている、強い力で磨き続けてエナメル質が薄くなっている、噛み合わせで表面が摩耗している、酸性のものによって表面が減っている。こうした背景があって、露出した象牙質に刺激が直接届いています。
ホワイトニングによるしみる症状は、露出しているわけではありません。エナメル質はあるまま、一時的に刺激が伝わりやすくなっている状態です。
この違いは、対処の順序に影響します。前者は原因そのものへの対応が必要で、時間が経てば戻るという性質のものではありません。後者は経過とともに戻ります。
両方が重なっている場合、もともとの知覚過敏のほうを先に扱うことになります。露出した部分がある状態でホワイトニングを進めると、症状が強く出やすくなるためです。
もともとの症状の程度をどう考えるかについては「ホワイトニングはしない方がいい?言われる理由と、見送るべき人の見分け方」で整理しています。
いつ出て、いつ治まるか
時間の経過に沿って見ていきます。
施術中から直後。 薬剤が作用している最中に感じることがあります。医院での施術であれば、この時点で伝えることができます。
当日から数日。 冷たいもの、甘いもの、風などでしみる状態が続きます。多くの場合はこの範囲で落ち着きます。数時間で治まることもあれば、数日かかることもあり、幅があります。
1週間以上続く場合。 ここからは、別の原因が背景にある可能性を確認したほうがよい段階に入ります。詳しくは後述します。
なお、出方や強さには個人差があります。同じ施術を受けても、まったく感じない人もいれば、数日続く人もいます。
方法によって、出るタイミングが違う
しみる症状が出る時期は、進め方によって傾向が変わります。
医院での施術は、高い濃度の薬剤を短時間で作用させます。そのため施術直後にまとまって出やすいのが特徴です。その日のうちに感じ始め、数日で落ち着くという経過をたどることが多くなります。
自宅でのケアは、低い濃度を長い時間かけて作用させます。1回あたりの負担は小さいものの、続けるうちに少しずつ感じるようになることがあります。ある日突然というより、じわじわと気になり始める形です。
どちらでも起こりうるもので、出方のタイミングが違うと理解しておくと、自分の状態が想定内かどうかを判断しやすくなります。
医院での施術がどのように進むかは「オフィスホワイトニングとは?1回でどこまで白くなるか・費用・通う回数を解説」で扱っています。
しみているあいだにできること・避けたいこと
すでに症状が出ている場合、何をすればよいかを整理します。
いま、その場で
医院での施術中であれば、その場で伝えてください。 中断する、光の当て方を変える、薬剤を洗い流すといった対応が取れます。我慢して最後まで受ける必要はありません。
自宅でのケア中であれば、いったんマウスピースを外して口をすすぎます。 決められた時間が残っていても、症状が出ているなら中断して構いません。
数日のあいだの過ごし方
刺激の強い飲食を控える。 冷たいもの、熱いもの、酸性のものは、刺激が伝わりやすくなっている状態では症状を引き出しやすくなります。常温のものを選ぶだけでも過ごしやすくなります。
知覚過敏用の歯磨き剤を使う。 硝酸カリウムなど、神経に伝わる刺激を抑える方向に働く成分が配合されたものがあります。すぐに効果が出るというより、続けることで感じ方が変わってくる性質のものです。
力を入れて磨かない。 柔らかい歯ブラシで、こするのではなく汚れを落とすつもりで動かします。
次の施術・次の装着までの間隔を空ける。 回復の時間を取ることが、そのまま対処になります。
避けたいこと
自己判断で予定どおり続ける。 回復の時間が取れないまま重ねると、症状が蓄積していきます。予定を守ることより、状態に合わせることが優先されます。
時間を延ばして取り返そうとする。 中断した分を取り戻そうと装着時間を延ばすと、負担が増えるだけです。進みが早くなるわけではありません。
痛み止めで抑えて続ける。 しみる症状は、いまの状態を知らせる情報でもあります。感じないようにして進めると、状態の変化に気づけなくなります。
強く磨いて汚れを落とそうとする。 表面が減れば、刺激はさらに伝わりやすくなります。しみているときほど、力を抜くほうが理にかなっています。
次に受けるときに備えてできること
しみたという経験は、次の進め方を決めるための材料になります。伝えるときに具体的であるほど、調整の精度が上がります。
いつ出たか。 施術中なのか、その日の夜なのか、翌日以降なのか。タイミングによって考えられる原因が変わります。
何でしみたか。 冷たいもの、甘いもの、風、噛んだとき。それぞれ意味することが違います。
どの歯か。 全体なのか、特定の1本なのか。1本に集中している場合は、その歯を確認する必要があります。
どのくらい続いたか。 数時間なのか、数日なのか。強さが増していったのか、和らいでいったのか。
これらが分かると、濃度を下げるのか、時間を短くするのか、間隔を空けるのかという判断がしやすくなります。濃度と装着時間の関係については「ホームホワイトニングのジェルとは?成分と濃度の考え方、入手経路の見分け方」で扱っています。
知覚過敏を抑える薬剤を併用する、施術の前から準備を始めるといった選択肢もあります。しみたから諦める、ではなく、進め方を変える材料として伝えるところから始まります。
長引くときに考えられること
1週間以上続く、日ごとに強くなる、特定の1本だけが痛む。こうした場合は、ホワイトニングによる一時的な変化とは別の原因が背景にあることがあります。
未治療のむし歯。 むし歯があると薬剤がしみて、強い症状が出ることがあります。自覚のない小さなものでも影響します。
歯のひび。 エナメル質に細かなひびがあると、薬剤が象牙質に届きやすくなり、症状が出やすくなります。
詰め物の適合。 詰め物と歯のあいだにすき間があると、そこから刺激が伝わりやすくなります。
歯ぐきの退縮。 歯ぐきが下がって象牙質が露出している部分があると、その箇所は刺激を受けやすい状態にあります。
また、何もしていないのにズキズキする、夜間に痛むという場合は、しみる症状とは性質が違う可能性があります。この場合は早めに受診してください。
いずれも、確認すれば分かることです。長引いていること自体が問題というより、原因を特定しないまま続けることのほうが避けたい状況になります。
よくある質問
しみたら、次の施術は受けないほうがいいですか?
受けられないということではありません。症状の内容を伝えたうえで、濃度や時間、間隔を調整して進める形が取れます。ただし、症状が残っている状態でそのまま次を重ねることは避けたいため、回復を待つ期間を含めて予定を組み直すことになります。
市販の知覚過敏用の歯磨き粉を使ってもいいですか?
神経に伝わる刺激を抑える方向に働く成分が配合されたものがあり、日常のケアとして使えます。ただし、症状が長引いている場合、それで様子を見続けると原因の確認が遅れます。数日使っても変化がない、あるいは強くなる場合は、確認してもらってください。
自宅でのケア中にしみたら、量を減らせばいいですか?
量を減らすことだけが対応とは限りません。装着時間を短くする、使う日の間隔を空ける、濃度そのものを見直すなど、状態に応じた方法があります。自宅で行う場合の進め方については「ホームホワイトニング用マウスピース、市販と歯科専用の違いは?」で扱っています。
まとめ
ホワイトニングで歯がしみるのは、象牙細管を通って刺激が神経に伝わりやすくなっているためです。薬剤が象牙質まで作用する過程で、歯の内部の水分バランスが一時的に変化することによります。歯の構造が失われて起きているものではなく、変化した状態は時間の経過とともに戻ります。
もともとの知覚過敏とは経路が同じでも原因が違い、あちらは象牙質が露出していることによるものです。両方ある場合は、そちらへの対応が先になります。
症状は当日から数日で落ち着くことが多く、医院での施術では直後に、自宅でのケアでは続けるうちに感じやすいという傾向があります。しみているあいだは、刺激の強い飲食を控え、知覚過敏用の歯磨き剤を使い、力を入れずに磨く。そして予定どおり続けようとしないことが対処になります。
1週間以上続く、日ごとに強くなる、1本だけ痛むという場合は、別の原因を確認する段階です。次に受けるときは、いつ・何で・どの歯が・どのくらいしみたかを伝えると、進め方を具体的に調整できます。
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・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります



