ホワイトニングを受けようと歯科を訪れたら、検査で虫歯が見つかった。あるいは前から治療を勧められている歯があり、そのままになっている。そして「治療が先です」と言われる。
ここで困るのが、その先の予定が組めないことです。治療にどのくらいかかり、そこからいつホワイトニングに入れるのか。詰め物の色はどの時点で決まるのか。全体の流れが見えないまま、いったん保留になってしまう。
ただ、これは諦める話ではなく順序の話です。治療とホワイトニングと詰め物の色合わせには、それぞれ「この順番でないと不都合が出る」という理由があります。
ここでは、なぜ治療が先になるのかを分解したうえで、始められる時期と全体の設計を整理します。
虫歯があると先に進められない理由は、痛みだけではない
「虫歯があるとしみるから」という説明はよく見かけますが、理由はそれだけではありません。3つに分けて見ていきます。
① 薬剤が歯の内部に直接届く
健康な歯であれば、薬剤はエナメル質を通過してから象牙質に届きます。この過程があるため、作用は段階的に進みます。
しかし虫歯で穴が開いていると、その経路を飛ばして薬剤が内部に届きます。象牙質や神経に近い部分へ直接作用することになり、強い痛みが出ることがあります。
小さな虫歯でも、表面が失われていれば同じことが起こりえます。自覚がないまま進めた場合に痛みが出やすいのは、このためです。
② 虫歯の部分は白くならない
薬剤が作用するのは、健康な歯の内部にある色素です。虫歯によって変色している部分は、その色が明るくなるわけではありません。
そのため、周囲の歯が明るくなるほど、変色した部分との差が目立つようになります。白くするつもりで進めた結果、気になる箇所が増えるという形になりかねません。
③ 進行に気づけなくなる
ホワイトニング中は、しみる症状が出ることがあります。これは薬剤の作用による一時的なもので、多くは数日で落ち着きます。
ここに虫歯による痛みが混ざると、どちらによるものかの区別がつきにくくなります。「ホワイトニングのせいだろう」と受け止めているうちに、虫歯が進んでしまうことがあります。
この3つがあるため、治療が先になります。受けられないのではなく、順序の問題です。この考え方は「ホワイトニングはしない方がいい?言われる理由と、見送るべき人の見分け方」でも整理しています。
なお、歯の色が気になっている原因が虫歯によるものなのか、表面の着色によるものなのかは見た目で判断しにくい部分です。原因ごとの見分け方は「歯の黄ばみを取る方法は?取れる黄ばみと取れない黄ばみの見分け方」で扱っています。
ホワイトニングで虫歯になることはあるか
逆方向の問いにも触れておきます。ホワイトニングが虫歯を作るのではないか、という不安です。
薬剤そのものが虫歯を作るわけではありません。 虫歯は口の中の細菌が糖を分解して酸を出し、それによって歯が溶けることで起こります。ホワイトニングの薬剤は歯の内部の色素に作用するもので、仕組みがまったく違います。
施術中にエナメル質の表面が一時的に脱灰した状態になりますが、これは唾液の働きによって元に戻ります。この点についても前述の記事で扱っています。
間接的に影響しうること
ただし、進め方によっては間接的に条件が変わることがあります。
しみるのを避けてブラッシングが甘くなる。 症状が出ているあいだ、歯を磨くのがおっくうになることがあります。汚れが残りやすくなれば、条件としては不利になります。
着色を避けようとして食生活が偏る。 色の濃いものを避けるうちに、間食の回数が増えたり、甘いものが増えたりすることがあります。回数が増えるほど、口の中が酸性に傾く時間は長くなります。
マウスピース装着中は唾液が届きにくい。 自宅で行う場合、装着しているあいだは歯の表面が唾液に触れにくい状態になります。装着後に口をすすぐ、決められた時間を守るといった基本が、ここで意味を持ちます。
つまり、起こるとすればこちら側の要因です。施術中も普段どおりのケアを続けることが、そのまま対応になります。
治療とホワイトニングの順序——全体の設計
ここからが本題です。何をどの順番で進めるのかを見ていきます。
なぜ治療が先なのか
前述の3つの理由に加えて、もうひとつあります。口の中の状態が整っていないと、薬剤の濃度や作用させる時間を決められないという点です。
しみやすさや歯の状態に合わせて設計するものなので、未確定の要素があると調整の前提が立ちません。治療は、その前提を揃える工程でもあります。
最終的な詰め物は「後」になる
ここが見落とされやすい部分です。
詰め物や被せ物は薬剤で色が変わりません。つまり、先に入れてしまうと、その後で周囲の歯が明るくなったときに、その部分だけ色が浮いて見えることになります。
そのため、ホワイトニングを終えた後の歯の色に合わせて作るのが一般的な進め方です。治療の段階では仮の状態で進めておき、色が決まってから最終的なものに置き換えるという形になります。
ホワイトニングの直後は色合わせに向かない
そして、ホワイトニングが終わってすぐに詰め物を入れるわけでもありません。ここにも理由が2つあります。
ひとつは、直後の歯は乾燥して白っぽく見えることです。この状態の色に合わせて詰め物を作ると、歯の色が落ち着いた後に、詰め物のほうが明るく感じられることがあります。
もうひとつは、直後は詰め物に使う接着材の効果が弱まるとされていることです。薬剤の作用が残っている状態では、接着が本来の強さで得られない可能性があります。
このため、ホワイトニングの後は 2〜3週間ほど空けてから最終的な処置に進むことが勧められています。
全体の流れ
まとめると、次のような順序になります。
- 検査——虫歯や歯周病の有無、詰め物の位置と数、今の歯の色を確認する
- 治療——必要な処置を行う。最終的な詰め物が必要な箇所は仮の状態で進めることがある
- ホワイトニング——症状が落ち着いてから開始する
- 2〜3週間ほど空ける——色が落ち着き、接着に影響が出にくくなるのを待つ
- 最終的な詰め物・被せ物——明るくなった歯の色に合わせて作る
治療の内容や歯の状態によって判断は変わります。最初の相談の段階でこの全体像を確認しておくと、どのくらい先にホワイトニングを始められるのかが読めるようになります。
治療にかかる期間をどう見積もるか
「治療が先」と言われたとき、いちばん気になるのはどのくらい先になるかという点です。ここは本数と内容によって大きく変わるため、一般的な目安を当てはめても意味がありません。
小さな範囲を1本詰めるだけであれば短く済みますが、複数本ある場合や、神経に近い深い虫歯がある場合は、通院の回数も期間も増えます。歯周病の治療が並行して必要になることもあります。
だからこそ、初診の段階で全体の見積もりを聞いておくことに意味があります。何本の治療が必要か、通院は何回くらいか、そこからホワイトニングに入れるのはいつごろか。この3つを確認しておけば、予定を立てられるようになります。
予定がある場合は、その時期を先に伝えてください。間に合わないと分かった場合でも、どこまでを予定までに済ませ、どこから後に回すかという組み方ができます。
「削るほどではない」と言われている場合
すべての虫歯がすぐに削る対象になるわけではありません。ごく初期の段階では、削らずに経過を見ることがあります。歯の表面のミネラルが失われかけているものの、まだ穴にはなっていないという状態です。
この段階の歯は、その部分だけが白く濁って見えることがあります。周囲より白いため一見すると問題がなさそうに見えますが、表面の性質は変わっている状態です。歯と歯のあいだや歯ぐきの際など、汚れが残りやすい場所に現れやすくなります。
この場合にホワイトニングを進めてよいかどうかは、状態によります。一律に可否が決まるものではありません。
判断が必要なのは、その部分に薬剤が作用したときにどうなるかという点です。表面の状態によっては、しみやすくなったり、その部分の見え方が変わったりすることがあります。
大切なのは、自己判断で進めないことです。経過観察中の歯があることを伝えたうえで、いまの状態で問題がないかを確認してください。定期的に見てもらっている場合は、これまでの記録がそのまま判断材料になります。
気づかないまま始めてしまった場合
自覚のない小さな虫歯は珍しくありません。始めてから症状で気づくこともあります。
次のような場合は、いったん中断して確認してください。
- 特定の1本だけが強く痛む
- 何もしていないのにズキズキする
- 日ごとに強くなる、または1週間以上続く
- 夜間に痛む
ホワイトニングによるしみる症状は、複数の歯に広く出て、冷たいものなどの刺激をきっかけに感じるという性質があります。上のような出方をする場合は、別の原因を考えたほうがよい状態です。
見分け方については「ホワイトニングで歯がしみるのはなぜ?仕組みと、症状が出たときの対処」で扱っています。
我慢して続けないでください。 痛みは、いまの状態を知らせる情報でもあります。
ホワイトニングの検査で虫歯が見つかることがある
歯科医院でホワイトニングを始める場合、口の中の状態を確認する工程が例外なく入ります。むし歯や歯周病の有無、詰め物の位置、歯の色。これらを見たうえで進め方が決まります。
この確認のときに、自覚のなかった虫歯が見つかることがあります。予定していたホワイトニングがすぐに始められなくなるため、遠回りに感じるかもしれません。
ただ、見つからなければそのまま進行していた、という見方もできます。しかも治療を済ませてからのほうが、しみる症状も出にくくなります。結果として、ホワイトニング自体も進めやすくなります。
口の中の状態は自分では確認できません。まず診てもらうところから始まるというのは、そういう意味でもあります。
医院での施術がどのように進むかは「オフィスホワイトニングとは?1回でどこまで白くなるか・費用・通う回数を解説」で扱っています。
よくある質問
治療中でもホワイトニングを始められますか?
治療の進み具合と、どの歯を治療しているかによります。処置が済んで症状が落ち着いていれば進められることもありますし、仮の状態が残っている場合は完了を待つことになります。判断が分かれる部分なので、治療を受けている医院で確認してください。
虫歯を治した歯は白くなりますか?
治療で詰めた部分は薬剤で色が変わりません。明るくなるのは、その周囲に残っている自分の歯の部分です。そのため、詰め物の面積が大きい歯では変化を感じにくくなります。詰め物の色をそろえたい場合は、ホワイトニングの後に作り替えるという流れになります。
治療した歯が黒ずんでいます。ホワイトニングで白くなりますか?
過去に神経を取る治療を受けた歯は、時間が経つと内側から色が濃くなることがあります。この変色は、外から薬剤を作用させる通常のホワイトニングでは十分に変わらないことが多くなります。歯の内側から対応する方法や、被せ物で対応する方法が検討されるため、その歯については別に相談することになります。周囲の歯を明るくしてから、その色に合わせて対応するという順序は同じです。
ホワイトニング後に虫歯が見つかったらどうなりますか?
治療を優先することになります。ホワイトニングで得た明るさは治療によって失われるものではないため、処置を済ませてから続きを検討できます。ただし詰め物が必要な場合、その色は現在の歯の色に合わせて決めることになります。
まとめ
虫歯があるとホワイトニングを先に進められないのは、痛みだけが理由ではありません。薬剤が穴から歯の内部に直接届くこと、虫歯で変色した部分は明るくならず差が目立つこと、そしてホワイトニングによるしみる症状と虫歯の痛みが区別しにくくなること。この3つがあります。
一方で、ホワイトニングの薬剤が虫歯を作るわけではありません。起こるとすれば、しみるのを避けて磨けなくなる、間食が増えるといった間接的な要因のほうです。
順序としては、検査 → 治療 → ホワイトニング → 2〜3週間空ける → 最終的な詰め物という流れになります。詰め物を後にするのは薬剤で色が変わらないためで、直後を避けるのは歯が乾燥して白く見えることと、接着材の効果が弱まるとされているためです。
「削るほどではない」と言われている歯がある場合は、自己判断で進めず、その旨を伝えて確認してください。始めてから特定の1本だけが痛む、ズキズキする、夜間に痛むという場合も、いったん中断して見てもらう場面です。
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・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります



