前歯に差し歯が入っていると、ホワイトニングの話は「差し歯は白くなりません」で止まります。
その先を調べると、今度は「歯のマニキュア」という言葉が出てきます。ただ、この2つが並んでいるだけでは選べません。マニキュアで何が起きるのか、どのくらいもつのか、作り替えるほどのことなのか。判断の材料が出てこないからです。
もうひとつ、前提から確かめておきたいことがあります。差し歯が黒く見えているのは、本当に「色」の問題なのかという点です。ここが違っていると、どの方法を選んでも解決しません。
ここでは、その見分け方から順に整理します。
差し歯は薬剤では色が変わらない
まず前提です。薬剤が作用するのは天然の歯の内部にある色素なので、人工物である差し歯の色は変わりません。周りの歯だけが明るくなると、差し歯の色が相対的に濃く見えるようになります。
ただし、差し歯には他の人工物と違う性質があります。土台になっているのは自分の歯根だという点です。
そのため、被せ物の部分だけを作り替えられます。歯を大きく触らずに交換できる詰め物と、土台から入れ直しになるインプラントの、ちょうど中間にあたる位置です。詰め物の扱いについては「詰め物があってもホワイトニングはできる?色が合わなくなる2つの方向と素材ごとの扱い」、人工の歯根がある場合については「インプラントがあるとホワイトニングはできない?順序と、すでに入っている場合の選択肢」で扱っています。
つまり、選択肢は残っています。問題は、何を選ぶかの前に、いま起きていることを特定することです。
「差し歯が黒い」には、3つの別の現象がある
「差し歯が黒い」「差し歯の根元が黒い」と感じているとき、実際に起きていることは1つではありません。3つあり、それぞれ相手が違います。
① 被せ物の面の色が、周りと合っていない
差し歯そのものの色が、周りの歯と違って見えている状態です。入れた当時は合っていても、周りの天然の歯が年齢とともに濃くなれば差が出ますし、ホワイトニングで明るくすれば差は逆方向に広がります。
これは色の問題です。 後述する方法で対応できます。
ただし、①の中でも由来が2つに分かれます。周りの歯のほうが変わったのか、被せ物のほうが変わったのかです。
保険で使われる前歯の差し歯は、見える面が樹脂でできています。この材料は水分や色素を取り込む性質があり、時間とともに色が変わっていきます。表面がすり減って粗くなると、色素がさらに留まりやすくなります。一方、金属を使わない陶材の被せ物は、長期間でも色が変わりにくい材料です。
そして、被せ物側の変化にも2種類あります。表面に付いた着色であれば、研磨することで改善する場合があります。材料そのものの色が変わっている場合は、磨いても戻りません。
つまり①は、「周りが明るくなったから差が出た」だけとは限りません。入れてから何年も経っている場合は、被せ物側も濃くなっていると考えるほうが実際に近くなります。
② 歯と歯ぐきの境に、黒い線が見えている
差し歯の根元に、細い黒い線が入っているように見える状態です。
これは色ではありません。被せ物の内側に使われている金属の縁が、歯ぐきが下がったことで見えるようになっているものです。表面がセラミックでも、内側に金属を裏打ちとして使う構成では、この可能性を消せません。
歯を明るくしても、表面に何かを塗っても、この線は変わりません。 見えているのが歯の色ではないからです。
③ 歯ぐき自体が、黒っぽく変色している
歯ではなく、その上の歯ぐきの色が変わっている状態です。
こちらは、被せ物や土台に使われている金属の成分が溶け出し、歯ぐきに沈着することで起こるとされています。歯ぐきそのものの色が変わっているため、歯に対して行う処置では変わりません。
見分け方——黒いのは、面か、線か、歯ぐきか
鏡で確認するとき、見る場所は次の3つです。
歯の面が全体的に濃いなら①です。周りの歯と並べて、面の色を比べます。入れた時期を思い出せると、被せ物側が変わっている可能性の見当も付きます。
根元に細い線があるなら②です。歯と歯ぐきの境目に沿って、線状に見えます。
歯ぐきの側が黒っぽいなら③です。歯から離れた歯ぐきの部分にも色が広がっているかを見ます。
この3つは同時に起きていることもあります。 ①だけだと思って対処すると、期待した見え方にならないことがあるため、先に切り分けておく意味があります。判断が付かない場合は、診てもらえば分かる部分です。
歯のマニキュアでできること・できないこと
ここから、①に対する方法を見ていきます。
歯のマニキュアは、歯科用のコーティング材を歯の表面に塗る処置です。歯を削らずに、色調を白く見せることができます。
漂白ではない
押さえておきたいのは、これが漂白ではないということです。
薬剤で内部の色素を分解するのではなく、表面を覆って見え方を変えています。そのため、内部の色は変わっていません。塗ったものが落ちれば、元の色に戻ります。
人工歯にも使えるが、条件が違う
天然の歯にも、セラミックや金属といった人工の歯にも施術できます。差し歯を白く見せることにも用いられます。
ただし、人工の歯では、天然の歯に比べて接着力が弱くなるとされています。同じように塗っても、同じようにもつとは限らないということです。
持続は限られている
歯科医院で行う場合、持続は1〜3か月程度とされています。飲食や歯磨きによって少しずつ落ちていきます。また、保険は適用されません。
つまり、位置づけは「一時的に見え方をそろえる手段」
以上をまとめると、歯のマニキュアは恒久的に色を合わせる方法ではなく、一定期間だけ見え方をそろえる手段にあたります。
そしてこの性質が、次の選び方につながります。
選択肢は、時間軸で選ぶ
差し歯の色が周りと合っていない場合、取れる選択は3つです。分かれ目になるのは「いつまで合っていてほしいか」です。
① そのままにする。 見える位置になければ、差があっても実際の見え方に影響しないことがあります。奥歯であれば、この判断は普通にあります。
② 一時的に合わせる。 期日が決まっている場合に向きます。式や撮影、面接など、その日に合っていればよい場面です。持続が1〜3か月程度であることが、逆に条件と噛み合います。期日から逆算する考え方については「ブライダルホワイトニングはいつから?前撮りがある場合の組み方と当日までの流れ」で整理しています。
③ 作り替える。 長く合っていてほしい場合はこちらです。周りの歯の色を決めてから、それに合わせて被せ物を作り直します。
「どれが優れているか」ではなく、期間の要件で決まります。半年後も1年後も合っていてほしいのに②を選ぶと、そのつど塗り直すことになります。逆に、来月の1日だけが問題なら③は過剰です。
作り替えるなら、順序は決まっている
③を選ぶ場合、ホワイトニングが先、被せ物が後という順序になります。周りの歯の色が決まってからでないと、合わせる先が決まらないためです。
施術の直後を避けて間を空ける理由も含めて、順序については「虫歯があるとホワイトニングはできない?治療との順序と、始められる時期」で整理しています。
材料の選び方で、②③の再発を避けられる場合がある
作り替えるときは、前述の②や③にも関わる選択があります。
金属を使わない構成を選ぶという選択肢です。土台の材料にも、被せ物の材料にも、金属以外のものがあります。内側に金属を使わない構成であれば、歯ぐきが下がったときに黒い線が出る要因も、成分が歯ぐきに沈着する要因も生じません。
保険の範囲かどうかは材料によって分かれます。いま黒い線や歯ぐきの変色が出ている場合は、作り替えのときにその話を出しておくと、同じことが繰り返されにくくなります。
色は記号で記録しておく
作り替えるタイミングは、ホワイトニングから2〜3週間ほど後になります。その間に色を忘れてしまわないよう、到達した色を記号で残しておくと伝えやすくなります。シェードガイドの読み方については「ホワイトニングのレベルとは?シェードガイドの記号の読み方と、段階の数え方」で扱っています。
よくある質問
差し歯だけを白くする薬剤はありますか?
ありません。薬剤が作用するのは天然の歯の内部にある色素で、人工物には作用しないためです。色を変える手段は、表面を覆うか、作り替えるかのどちらかになります。
マニキュアを塗ったまま食事はできますか?
できますが、飲食や歯磨きによって少しずつ落ちていきます。色の濃いものや、こすれる力が強い食べ方は、落ちる速さに影響します。塗った直後にどう過ごすかは処置を受けた歯科医院で確認してください。
市販の塗るタイプでも同じことができますか?
歯科で行うものと市販のものでは、使う材料も、塗る前の処理も違います。歯科では表面の状態を整えたうえで塗るため、付き方が変わります。市販のものを試す場合も、差し歯が入っている状態であれば、先に一度診てもらうほうが安全です。
歯ぐきの黒ずみは元に戻りますか?
原因になっている金属を取り除いたうえで処置を行うことで、改善する場合があります。ただし変色の程度や範囲によって見込みは変わるため、状態を診てもらったうえでの判断になります。歯を明るくする施術では変わりません。
差し歯は何年くらいで作り替えるものですか?
期間は材料や噛み合わせ、清掃の状態によって変わるため、一律の年数では決まりません。判断の目安になるのは年数より状態のほうで、縁が欠けている、境目に段差がある、被せ物の下で問題が起きているといった場合は、色とは関係なく作り替えの時期にあたります。色だけが理由の場合は、急ぐ性質のものではありません。
前歯の差し歯が1本だけです。ホワイトニングは避けたほうがいいですか?
避ける必要はありません。ただし、周りの歯が明るくなればその1本との差は広がるため、差が出たあとどうするかを先に決めておくほうが順序として整います。作り替えるつもりがあるなら、ホワイトニングを先に済ませて色を決めるという流れになります。
まとめ
差し歯は人工物なので、薬剤では色が変わりません。ただし土台が自分の歯根であるため、被せ物の部分だけを作り替えられます。
その前に確かめたいのが、「黒い」と感じているものの正体です。①被せ物の面の色が合っていない ②歯と歯ぐきの境に金属の縁が見えている ③歯ぐき自体に金属の成分が沈着しているの3つがあり、②と③は歯の色の問題ではないため、明るくしても表面を覆っても変わりません。
①に対する手段のひとつが歯のマニキュアです。削らずに表面を覆って白く見せる処置で、漂白ではありません。人工歯にも使えますが接着力は弱くなり、持続は1〜3か月程度とされています。保険は適用されません。
だから選択は時間軸で決まります。見える位置になければそのまま、期日があるなら一時的に合わせる、長く合わせたいなら作り替える。
作り替えるならホワイトニングが先です。そのとき金属を使わない構成を選べば、②や③が繰り返されにくくなります。
大阪梅田矯正歯科のホワイトニング
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・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります



