歯の色が気になっているが、インプラントが入っている。あるいは、これから入れる予定がある。調べてみると、インプラントは白くならないと書かれています。
ただ、そこで説明が終わってしまうことがほとんどです。では、どうすればいいのか。すでに入っているなら諦めるしかないのか。これから入れるなら、何か気をつける順序があるのか。
実は、これから入れる場合とすでに入っている場合では、取るべき行動がまったく違います。そして前者では、順序を間違えると大きな手戻りになります。
ここでは、なぜ色が変わらないのかを押さえたうえで、状況別に何ができるのかを整理します。
インプラントの人工歯は、薬剤では色が変わらない
まず前提です。
インプラントの上部構造——実際に見えている歯の部分には、セラミックやジルコニアといった素材が使われます。これらは無機質な素材で、内部に薬剤が浸透する構造を持っていません。
ホワイトニングは、歯の内部にある色素に薬剤を作用させて色を変える方法です。その色素にあたるものを人工物は持っていないため、反応そのものが起こりません。
つまり、効きが弱いのではなく、作用する相手がいないということです。濃度を上げても、時間を延ばしても、回数を重ねても結果は変わりません。この仕組みについては「ホワイトニングの仕組みは?薬剤が色素を分解する過程と、効かないものがある理由」で扱っています。
その結果、口の中で起きるのは天然歯だけが明るくなるという状態です。今は馴染んで見えているインプラントが、周囲が明るくなることで浮いて見えるようになります。
これから入れるなら、順序が決定的に重要
インプラント治療を予定している段階であれば、まだ選択肢があります。そして、ここでの判断が後の負担を大きく左右します。
推奨される順序
一般的に勧められるのは、次の順序です。
- 天然歯のホワイトニングを先に行う
- 到達した明るさを、色の基準として決める
- その色に合わせて、インプラントの上部構造を作る
この順序であれば、完成した時点で色が揃います。上部構造はその時点の天然歯の色に合わせて作られるためです。
逆にすると、作り替えが必要になる
一方、インプラント治療をすべて終えてからホワイトニングを行うと、どうなるか。
天然歯だけが明るくなり、先に入れた上部構造との間に色の差が生まれます。そして上部構造の色は後から変えられないため、揃えたい場合は作り直すことになります。
詰め物の作り替えとは、規模が違う
ここが、インプラントで順序が特に重要になる理由です。
詰め物であれば、外して作り直すという工程で済むことが多くなります。しかしインプラントの上部構造は、土台となる部分との接続を含めた作業になります。型取りから製作、装着までの工程が改めて必要になり、期間も費用も相応にかかります。
つまり、同じ「作り替え」でも負担がまったく違うということです。だからこそ、順序を先に決めておく価値があります。
相談するタイミング
インプラント治療は期間が長く、複数の段階を踏みます。そのため、どの段階で相談するかが分かれ目になります。
上部構造の色を決める段階に入ってから「実は白くしたい」と伝えても、そこから天然歯を明るくする期間を確保することになり、治療全体が後ろにずれます。
治療の計画を立てる段階で、歯の色についての希望を伝えておくのが確実です。そうすれば、どの時点でホワイトニングを挟むかを含めて組んでもらえます。
治療期間の「待ち時間」を使えることがある
インプラント治療には、埋入した部分が安定するのを待つ期間があります。この間、上部構造はまだ入っていません。
つまり、この待ち時間を天然歯のホワイトニングにあてられる可能性があります。ホワイトニングも到達までに時間がかかる方法なので、待ち時間と重ねられれば全体の期間を延ばさずに済みます。
ただし、この判断は口の中の状態によります。手術後の経過や、周囲の組織の状態によっては、時期をずらすことになります。あくまで「相談する価値がある」という範囲の話で、自己判断で始めるものではありません。
治療を受けている医院と、ホワイトニングを受ける医院が違う場合は特に、両方に状況を伝えて確認してください。片方だけの判断では、進めてよい時期かどうかが分かりません。
なお、治療とホワイトニングの順序という考え方は、インプラントに限った話ではありません。虫歯の治療でも同じ構造があります。この点は「虫歯があるとホワイトニングはできない?治療との順序と、始められる時期」で扱っています。
すでに入っている場合の選択肢
では、もう入っている場合はどうか。諦めるしかないわけではありません。選択肢は3つあります。
① 差が目立たない範囲に留める
天然歯を明るくしつつ、インプラントとの差が気にならない程度で止めるという進め方です。
目標を「できるだけ白く」ではなく「今より少し明るく、かつ人工歯と馴染む範囲で」と置き直します。到達点を先に決められるため、進めながら調整できます。
現実的な選択肢として、これを選ぶ方は少なくありません。
② 上部構造を作り替える
天然歯を目標まで明るくしたうえで、その色に合わせて上部構造を作り直す方法です。
色は揃いますが、前述のとおり期間と費用がかかります。前歯で、色の差が日常的に気になる位置にある場合は検討の対象になります。
なお、この場合も順序は同じです。先に天然歯を明るくしてから作り替えることになります。逆にすると、また合わなくなります。
③ そのままにする
インプラントが奥歯にあり、日常的に見える位置でなければ、差が生まれても実際には気にならないことがあります。
この場合、天然歯だけを明るくして、人工歯はそのままという判断が成り立ちます。
どれを選ぶかは、位置と本数で決まる
判断の材料になるのは、インプラントがどこに何本入っているか、そして現在どのくらい色が合っているかです。
前歯に複数本ある場合と、奥歯に1本ある場合では、同じ「差が生まれる」でも意味がまったく違います。まず現在の状態を確認してもらったうえで、どの選択肢が現実的かを決めることになります。
なお、インプラント以外にも詰め物や被せ物が入っている場合、それらも同じように色が変わりません。人工物が複数ある状態では、どこまで揃えるかという判断がより複雑になります。人工物と色の関係については「ホワイトニングのデメリットは?消えるもの・残るもの・避けられるものに分けて解説」でも整理しています。
色合わせが難しくなる条件
同じインプラントでも、色を揃える難易度には差があります。
前歯に1本だけ入っている場合。 これがいちばん難しい条件になります。両隣が天然歯であるため、わずかな差でも比較対象がすぐ横にあります。奥歯であれば多少の差は目立ちませんが、前歯の1本は常に見比べられる位置にあります。
天然歯とインプラントが交互に並ぶ場合。 差が繰り返し現れるため、揃っていない印象が強く出ます。まとまって入っている場合より難しくなります。
光の透過性の違い。 天然歯は、エナメル質が半透明で光を透過します。そのため見る角度や光の当たり方で表情が変わります。人工物も自然に見えるよう作られますが、素材の性質は天然歯と同じではありません。色の数値が合っていても、光の条件によって見え方に差が出ることがあります。
これらの条件に当てはまる場合、目標をどこに置くかがより重要になります。極端に明るくするほど、揃えることの難易度は上がっていきます。
インプラント周囲で気をつけること
施術を進めるうえで、いくつか確認しておきたい点があります。
歯ぐきへの薬剤の付着。 薬剤が歯ぐきに触れると、その部分が一時的に白くなったりヒリヒリしたりすることがあります。これはインプラントの有無にかかわらず起こりますが、周囲の歯ぐきの状態は個別に確認しておく必要があります。
周囲に炎症がある場合。 インプラントの周りの組織に炎症がある状態では、そちらへの対応が先になります。薬剤の刺激で症状が出やすくなるためです。自覚がないこともあるため、始める前の確認が要ります。
マウスピースを使う場合の適合。 自宅で行う方法では、歯型に合わせたマウスピースを使います。インプラントが入っている部分の形状も含めて作られますが、薬剤が作用しない部分にジェルを行き渡らせる意味はありません。この点も含めて設計してもらうことになります。
上部構造の色は、時間とともにどうなるか
もうひとつ、長い目で見たときの話をしておきます。
セラミック系の素材は、天然歯に比べて着色しにくいとされています。内部に色素が入り込む構造ではないためです。ただし、表面に汚れが付着することはあります。これは清掃で対応できる範囲です。
一方、天然歯は年月とともに変色していきます。飲食による着色が蓄積し、加齢によって内部の色も変わっていきます。
つまり、時間の経過とともに、両者の差は開く方向に進みます。入れた当初は馴染んでいたインプラントが、数年後には「そこだけ白く見える」という状態になることがあるわけです。
これは、天然歯側の色を保つ意味が大きいということでもあります。定期的な清掃と、必要に応じた維持を続けることで、差が開く速さを緩やかにできます。
自分の歯の色が何によって変わっているかについては「歯の黄ばみを取る方法は?取れる黄ばみと取れない黄ばみの見分け方」で整理しています。
よくある質問
インプラントの人工歯だけを白くする方法はありませんか?
薬剤で色を変えることはできません。表面に付着した汚れであれば清掃で落とせますが、それは元の色に戻すことであって、元の色より明るくするものではありません。色そのものを変えたい場合は、作り替えという方法になります。
インプラント治療中ですが、いつ相談すればいいですか?
早いほど選択肢が広がります。 上部構造の色を決める段階に入る前であれば、天然歯を先に明るくしてからその色に合わせるという順序が取れます。すでに色を決める段階に近い場合でも、伝えておけば進め方を調整できることがあります。治療を受けている医院にも、その意向を共有しておいてください。
これから複数本まとめて入れる予定です。順序は同じですか?
考え方は同じですが、揃えることの重要度は上がります。本数が多いほど、色が合っていない場合の影響が大きくなるためです。逆に、まとめて作るのであれば同じ基準で一度に色を決められるという利点もあります。1本ずつ時期をずらして入れる場合は、その都度その時点の天然歯の色に合わせることになるため、間にホワイトニングを挟むと前後で基準が変わります。どの時点で色を決めるのかを、治療計画の中で先に確認しておいてください。
奥歯のインプラントでも気にしたほうがいいですか?
見える位置かどうかで判断が変わります。奥歯で日常的に見えない位置であれば、差が生まれても影響は小さくなります。ただし、笑ったときにどこまで見えるかは人によって違うため、実際に確認してもらうと判断がつきます。
まとめ
インプラントの上部構造は無機質な素材で、薬剤が作用する相手を持たないため、色は変わりません。その結果、天然歯だけが明るくなり、差が生まれます。
これから入れるのであれば、順序が決定的に重要です。 先に天然歯を明るくし、その色を基準として上部構造を作る。この順序であれば色が揃います。逆にすると作り替えが必要になり、詰め物の作り替えとは規模も負担も違います。治療の計画を立てる段階で希望を伝えておくのが確実です。
すでに入っている場合も、選択肢は3つあります。 差が目立たない範囲に留める、上部構造を作り替える、そのままにする。どれが現実的かは、インプラントの位置と本数、現在の色差によって決まります。
そして長い目で見ると、天然歯は変色し、人工歯は変わらないため、差は開く方向に進みます。天然歯側の色を保つことには、その差を緩やかにするという意味もあります。
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・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります



