全額が自己負担になるぶん、確定申告で何か戻らないかと考えるのは自然なことです。
調べると「対象外です」という記述に行き当たります。ただ、理由まで書かれていないことがほとんどです。そのため、自分のケースが本当に当てはまるのかが確かめられません。
そしてもうひとつ、よくある取りこぼしがあります。「自費だから対象外」と受け取ってしまい、同じ歯科で受けた治療の分まで諦めてしまうというものです。
実際の境界線は、費用が保険か自費かではありません。ここでは、その線がどこに引かれているのかを整理します。
医療費控除は、保険とは別の仕組み
まず、混同されやすい2つを分けておきます。
保険は、その場の窓口負担が変わる仕組みです。対象になれば、支払う額そのものが変わります。
医療費控除は、税の計算に反映される仕組みです。1年間に支払った医療費を申告することで、後から税の負担が調整されます。窓口で安くなるものではありません。
この区別と、保険の範囲でできることについては「ホワイトニングに保険は使える?適用外の理由と、保険でできること」で整理しています。
支払った額がそのまま戻るわけではない
もうひとつ、仕組みとして押さえておきたい点があります。
医療費控除は、1年間に支払った医療費のうち、一定の額を超えた部分が計算に使われる仕組みです。支払った全額がそのまま反映されるものではありません。しかもその「一定の額」は、その年の所得によって変わります。
さらに、そこから計算されるのは税の負担が調整される幅であって、超えた分がそのまま返ってくるわけでもありません。
具体的な基準や計算の方法は国税庁の案内に示されています。ここでは、対象になるかどうかの線の引かれ方に絞って見ていきます。
以下は、医療費控除のほうの話です。
境界線は「自費かどうか」ではない
ここが、この話の中心にあたります。
自費でも対象になるものがある
国税庁は、歯の治療費の具体例として次のように示しています。
金やポーセレンは歯の治療材料として一般的に使用されているといえますから、これらを使った治療の対価は、医療費控除の対象になります。
金やセラミックを使った処置は、保険の範囲に入らないことがあります。それでも対象になると示されているわけです。
つまり、自費だから対象外、という線の引き方はされていません。
分けているのは「目的」
では何で分かれるのか。同じ資料には、こうも示されています。
同じ歯列矯正でも、容ぼうを美化するための費用は、医療費控除の対象になりません。
同じ歯列矯正でも分かれる、という書き方に注目してください。処置の種類ではなく、何のために行うかで扱いが変わっています。
かみ合わせの問題を治すために行うものは治療にあたり、見た目を整えるために行うものはそうではない。この線が、歯科の費用全体に引かれています。
「同じ歯列矯正でも」が意味していること
この一文は、歯科の費用を考えるうえで手がかりになります。同じ資料には、対象になる場合についてもこう示されています。
発育段階にある子供の成長を阻害しないようにするために行う不正咬合の歯列矯正のように、歯列矯正を受ける人の年齢や矯正の目的などからみて歯列矯正が必要と認められる場合の費用は、医療費控除の対象になります。
同じ処置が、目的によって両側に振り分けられているわけです。処置の名前だけでは決まらず、何のために行うのかが問われています。
この考え方が分かると、ホワイトニングの扱いも推測ではなく理屈で理解できます。
ホワイトニングはどちら側か
以上を踏まえると、答えが出ます。
ホワイトニングは、歯の色を明るくする処置です。かみ合わせや、むし歯や、歯周病を治すものではありません。そのため、原則として容ぼうを美化する側に分類され、対象になりません。
理由が「自費だから」ではなく「目的が違うから」だという点が重要です。これは保険の場合とまったく同じ線です。保険が使えないのも、目的が治療ではないためでした。制度が違っても、同じ場所に線が引かれているということになります。
同じ歯科の会計でも、扱いが分かれる
ここからが、実際の取りこぼしを防ぐ話です。
ホワイトニングの前には、治療の工程が入る
歯科医院でホワイトニングを始める場合、口の中を整える工程が先に入ります。
未治療のむし歯の治療。歯石の除去。歯周病の治療。 これらは色を変えるための処置ではなく、治療そのものです。順序については「虫歯があるとホワイトニングはできない?治療との順序と、始められる時期」で扱っています。
つまり、同じ医院で、同じ時期に受けたものの中に、対象になるものと対象外のものが混ざります。
だから、内訳を分けて把握する
ここで効いてくるのが、領収書の扱いです。
内訳が分かれているかを確認してください。ホワイトニングの費用と、治療の費用が1枚にまとまっている場合、後から切り分けるのが難しくなります。
会計のときに「治療の分と、ホワイトニングの分を分けて出してもらえますか」と伝えておくと、迷わずに済みます。歯科では日常的に扱われている依頼です。
「自費だから全部対象外」と考えて領収書を捨ててしまうのが、避けたい取りこぼしです。ホワイトニング自体が対象外でも、その手前で受けた治療は別の扱いになります。
保険が使えた分も、支払った額は残しておく
もうひとつ見落とされやすいのが、保険が使えた処置の窓口負担です。
保険が適用されて負担が軽くなっている場合でも、その場で支払った分は自分が支払った医療費です。医療費控除は保険とは別の制度なので、保険が使えたことを理由に対象から外れるわけではありません。
むし歯の治療や歯石の除去は、保険の範囲で受けられることがあります。ホワイトニングの前工程として受けたこれらの費用は、保険が使えたうえで、支払った分が控除の計算に入るという形になります。
つまり、歯科でもらう領収書は3種類が混ざっていることになります。保険が使えた治療の分、保険の使えない治療の分、そして色を変える施術の分です。前の2つと、最後の1つで扱いが分かれます。
判断が付かないものは、その場で捨てずに残しておいてください。後から確認する余地が残ります。
通院費の扱い
医療費控除では、診療の対価だけでなく、通院にかかった費用も一定の範囲で扱われます。ここにも線があります。
公共交通機関を使った通院の費用は、通常必要なものとして扱われます。
自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場の料金については、国税庁が明確に示しています。
自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金などは、控除の対象には含まれません。
もうひとつ、見落とされやすいものがあります。
小さいお子さんの通院に付添が必要なときなどは、付添人の交通費も通院費に含まれます。
付き添った人の交通費も通院費に含まれる、ということです。
ただし前提として、対象になるのは「対象になる治療」のための通院分です。ホワイトニングのために通った分の交通費は、施術そのものと同じ扱いになります。
家族の分と、申告の実務
最後に、実務の側を押さえておきます。
生計を一にする家族の分を合わせられます。 自分の分だけでなく、同じ生計で暮らす家族のために支払った医療費をまとめて申告できます。歯科の費用は家族で発生しやすいため、ここは確認する価値があります。
対象になるのは、その年に支払った分です。1月1日から12月31日までに実際に支払ったものが単位になります。施術を受けた日ではなく、支払った日で見ます。
領収書は保管しておきます。 申告では明細書を作成することになるため、内訳が分かる形で残しておくと作業が進みます。
過去の分についても、さかのぼって申告できる場合があります。 申告をしていなかった年の分は、一定の期間内であれば後から手続きできます。「去年の分は間に合わなかった」と諦める前に、対象になる期間を確認してみてください。
そして、最終的な判断は国税庁および税務署の基準によります。個別のケースが対象になるかどうかは、ここまでの整理だけでは決まりません。判断に迷う場合は、領収書と処置の内容が分かるものを持って、税務署に確認してください。
よくある質問
変色した歯を白くするのは、治療ではないのですか?
歯の色を明るくする処置は、かみ合わせや病気を治すものではないため、原則として容ぼうを美化する側に分類されます。本人にとって切実な悩みであることと、制度上の分類は別の話になります。
神経を失った歯の変色を明るくする場合はどうですか?
このケースは、事情によって判断が変わりうる部分です。個別の判断は国税庁および税務署の基準によるため、処置の内容が分かるものを用意して確認することになります。ここで「対象になります」と言い切れる性質のものではありません。
ホワイトニングの前に受けたクリーニングは対象になりますか?
歯石の除去や歯周病の治療として行われたものは、治療にあたります。一方、色を明るくする目的で行われた処置は扱いが変わります。同じ「クリーニング」という言葉でも中身が違うため、領収書の内訳を確認してください。
領収書に内訳が書かれていない場合はどうすればいいですか?
受診した歯科医院に問い合わせれば、内訳を確認できます。会計の時点で分けて出してもらうよう伝えておくのが確実です。
ホームホワイトニングのキット代やジェル代はどうなりますか?
歯科医院を通して受け取るものであっても、目的が歯の色を明るくすることであれば扱いは同じになります。方法が自宅か医院かで線が変わるわけではありません。費用の内訳については「ホームホワイトニングの値段はいくら?開始時の費用と、後から足されるものを分けて解説」で整理しています。
会社員ですが、申告が必要ですか?
医療費控除は年末調整では処理されないため、適用を受けるには自分で確定申告をすることになります。手続きの方法や必要な書類は国税庁の案内に従ってください。
まとめ
医療費控除は、税の計算に反映される仕組みです。窓口負担が変わる保険とは別のものです。
そして境界線は、保険か自費かではありません。国税庁は「金やポーセレンを使った治療の対価は対象になる」と示す一方で、「同じ歯列矯正でも、容ぼうを美化するための費用は対象にならない」とも示しています。分けているのは目的です。
ホワイトニングは歯の色を明るくする処置であるため、原則として容ぼうを美化する側に分類され、対象になりません。保険が使えない理由と、同じ場所に線が引かれています。
ただし、同じ歯科の会計に対象と対象外が混ざります。ホワイトニングの前に受けたむし歯の治療、歯石の除去、歯周病の治療は治療にあたります。「自費だから全部対象外」と考えて領収書を捨てないことが、実際の取りこぼしを防ぎます。
通院費については、公共交通機関の分は通常必要なものとして扱われる一方、自家用車のガソリン代や駐車場の料金は含まれません。小さいお子さんの通院で付添が必要な場合は、付添人の交通費も通院費に含まれます。
最終的な判断は国税庁および税務署の基準によります。 迷う場合は、処置の内容が分かるものを持って確認してください。
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・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります



