歯科医院でホームホワイトニングを始めると、マウスピースと一緒にジェルを渡されます。ただ、それが何なのかまでは分からないまま使い始めることも少なくありません。
調べてみると、通販にも似たものが並んでいます。値段は安く、海外製には濃度が高いものもある。そうなると「同じものなら安いほうがいいのでは」「濃度が高ければ早く白くなるのでは」という考えが浮かびます。
ただ、この2つの見方はどちらもジェルを「白くする液体」として捉えたときの発想です。中身と、それが手元に届くまでの経路を知ると、比べ方が変わります。
ここでは、ジェルに何が入っていてどう働くのか、濃度をどう考えればいいのか、そして入手経路をどう見分けるのかを整理します。
ジェルの主成分と、歯が明るくなる仕組み
自宅で使うホワイトニングジェルには、過酸化尿素という成分が用いられることが多くなっています。
この過酸化尿素は、口の中で分解して過酸化水素になります。実際に歯に働きかけるのは、分解した後の過酸化水素のほうです。
過酸化水素は歯の内部にある色素に作用し、色を分解していきます。ここで大切なのは、歯を削っているわけではないということです。表面を擦って落とすのではなく、内部の色素そのものに作用するため、歯の形や厚みが変わるものではありません。
製品によっては、知覚過敏を抑える成分やフッ化物が一緒に配合されているものもあります。これは薬剤を使うことで一時的に歯が敏感になったり、表面が脱灰した状態になったりすることへの配慮です。
なぜ過酸化水素をそのまま使わないのか
分解して過酸化水素になるのなら、最初から過酸化水素を入れておけばよいのではないか。そう思えますが、自宅で使うものとしては扱いにくい性質があります。
過酸化水素は分解が速く進みます。作用も速い代わりに、保管の条件によって濃度が変わりやすいのです。開封してから時間が経つほど、当初の状態を保ちにくくなります。
過酸化尿素は固形に近い形で安定しており、口の中の水分と温度に触れてから分解が始まります。使うときになって初めて働き始める形になるため、保管しておくものとして適しています。
自宅用のジェルが過酸化尿素という形を取っているのは、効果を弱めるためではなく、歯科医師がその場にいない環境で使うことを前提とした設計だということです。
なお、ジェルの塗り方や量、保管の仕方については「ホームホワイトニング用マウスピース、市販と歯科専用の違いは?」で扱っています。
歯科医院での施術で使う薬剤とは「別物」ではない
ホームとオフィスは、まったく違う薬を使っていると思われがちです。実際には、そうではありません。
歯科医院での施術で使われるのは過酸化水素です。そして前述のとおり、自宅用のジェルに含まれる過酸化尿素は、分解して過酸化水素になります。
つまり、最終的に歯に働きかけているものは同じです。違うのは、それがどういう速さで届くかという点になります。
過酸化尿素は分解がゆるやかに進みます。そのため、一度に強く作用するのではなく、低い濃度のまま長い時間をかけて作用する設計になります。自宅用のジェルに装着時間が設定されているのは、この性質があるからです。
逆に医院での施術は、過酸化水素をそのまま高い濃度で使い、短時間で作用させます。歯科医師・歯科衛生士が管理する環境だから、その扱いができるという関係です。
ホームとオフィスは、同じ仕組みを違う速度で使っている。 この見方をすると、どちらが優れているかという比べ方ではなく、自分の生活に合うのはどちらの速度か、という選び方に変わります。
医院での施術で薬剤がどう扱われるかは「オフィスホワイトニングとは?1回でどこまで白くなるか・費用・通う回数を解説」で扱っています。
濃度は「高いほうがよい」ではない
ジェルを比べるとき、濃度の数字に目が行きます。高いほど早く白くなりそうに見えるためです。
ただ、濃度は単独で意味を持つ数字ではありません。
濃度と時間はセットで設計されている
歯に届く薬剤の総量は、濃度と作用させる時間の組み合わせで決まります。濃度が高ければ短い時間で、低ければ長い時間をかけて。どちらの組み合わせでも、到達点は設計できます。
問題になるのは、この関係を無視したときです。濃度を上げたうえで装着時間も長いままにすると、必要な量を超えて作用させることになります。早く進むのではなく、負担だけが増えるという結果になりやすい部分です。
自宅用のジェルに「1回何時間」という指定があるのは、そのジェルの濃度に合わせて時間が決められているからです。ジェルを変えれば、時間も変わります。
濃度が上がると何が増えるか
濃度を上げたときに増えるのは、白くなる速さだけではありません。
しみる症状が出やすくなります。 薬剤が歯の内部に作用する過程で神経が敏感になるためで、濃度が高いほど出やすくなる傾向があります。
歯ぐきに触れたときの刺激も強くなります。 マウスピースからあふれたジェルが歯ぐきに触れると、白くなったりヒリヒリしたりすることがありますが、濃度が高いほどその程度は大きくなります。
そして、しみる症状が強く出れば、続けることが難しくなります。途中で使えなくなれば、結果的に目標への到達は遠のきます。濃度を上げることが、到達を早めるとは限らないということです。
国内で家庭用として承認されているものは濃度が限られている
自宅で使うジェルは、歯科医師がその場で管理できない環境で使われます。そのため、国内で家庭用として承認されている製剤は、濃度が一定の範囲に収まるよう定められています。
一方、海外にはより高い濃度の製品が存在します。ただしそれらは日本の承認を受けたものではありません。表示されている内容を国内の基準に照らして確かめる手立てがないという点は、押さえておく必要があります。
選ぶ軸は、濃度の高さそのものではありません。自分の歯の状態と、日常のなかで確保できる装着時間に合っているかどうかです。
なぜ歯科医院を通して渡されるのか
自宅で使うものなのに、なぜ受け取るために歯科医院へ行く必要があるのか。ここには理由があります。
口の中の状態を確認する必要があるため
同じジェルでも、使ってよいかどうかは人によって変わります。
未治療のむし歯や歯周病がある場合、薬剤がしみたり症状が出やすくなったりします。この場合は先に治療が必要になります。
詰め物や被せ物の位置と数も確認されます。これらは薬剤で色が変わらないため、周囲の歯が明るくなったときに色の差が出る場所を、始める前に把握しておく必要があるためです。
歯にひびが入っている場合や、エナメル質の状態によっても判断は変わります。これらは自分では確認できません。
濃度と時間を、その人の状態に合わせて決めるため
しみやすい方に対しては、濃度を下げる、装着時間を短くする、使う日数の間隔を空けるといった調整ができます。
そして重要なのは、渡して終わりではないという点です。使い始めてから症状が出た場合、進め方を変えられます。この調整の余地があるかどうかが、続けられるかどうかを分けます。
通販に並んでいるものをどう見るか
歯科で使われるものと似た製品が、通販でも見つかることがあります。これをどう考えればいいか。
前提として、国内で承認された製剤は、歯科医院を通じて提供される流通になっています。その仕組みの外に並んでいるものについては、どこから来たのか、どういう環境で保管されてきたのかを確認する手立てがありません。
これは販売している側の問題というより、経路をたどれないことそのものが判断材料を欠くという話です。ジェルは温度によって変質しうるものなので、保管の経路が分からないことは、中身の状態が分からないことに近くなります。
海外の製品についても同様で、日本の承認を受けていないものは、表示されている内容を国内の基準で確かめられません。
個人輸入という選択については「ホワイトニングは自宅でどこまでできる?市販品と歯科の違い・効果の限界を解説」でも触れています。
手元のジェルについて確認しておきたいこと
受け取るときに説明を受ける内容ですが、後から思い出せる形にしておくと迷いません。
何本で何日分にあたるか。 期間の見通しが立ちます。途中で足りなくなるタイミングも読めます。
使用期限と保管の指定。 冷蔵など温度の指定があるかどうか。指定がある場合、それを外れた保管をすると想定どおりに働かない可能性があります。
1回の装着時間の指定。 前述のとおり、時間はそのジェルの濃度とセットで決まっています。自己判断で延ばす対象ではありません。
しみたときにどうするか。 連絡先と、調整してもらえる余地があるかを確かめておきます。症状が出てから調べ始めると、そのまま中断につながりやすくなります。
追加が必要になったときの流れ。 受診が要るのか、どのくらいの期間がかかるのかを知っておくと、切らして止まる事態を避けられます。
使う前に見ておきたい状態のサイン
前述のとおり、過酸化尿素は温度と水分に触れると分解が始まります。保管の条件を外れていた場合、使う前に気づける変化が出ることがあります。
中身が分離している。 ジェルの成分が均一でなくなり、液体と固形分が分かれて見える状態です。
色が変わっている。 受け取ったときと比べて濁っていたり、色味が違って見えたりする場合です。
容器がふくらんでいる。 分解が進んでガスが発生していることがあります。
こうした変化があるものは、想定どおりに働かない可能性があります。期限内であっても、状態が変わっているものは使わずに確認してください。 判断に迷う場合は、写真を撮って相談すれば見てもらえます。
よくある質問
通販のジェルと歯科で渡されるジェルは、成分が同じなら同じものですか?
成分名が同じでも、確認できる範囲が違います。歯科で渡されるものは、口の中の状態を確認したうえで濃度と使い方が決められ、経過に応じて調整もできます。通販で手に入れた場合、その部分は自分で判断することになります。同じなのは成分名であって、使う条件までは同じになりません。
濃度の高いジェルに変えれば早く白くなりますか?
濃度と装着時間はセットで設計されているため、濃度だけを上げても想定どおりには進みません。しみる症状が出やすくなり、続けられなくなれば到達はかえって遠のきます。進みが遅いと感じる場合は、濃度以外に原因があることも多いため、状態を確認してもらうほうが確実です。
ジェルが余ってしまいました。次回まで取っておけますか?
使用期限と保管方法の指定によります。指定された条件を外れて保管したものは、想定どおりに働かない可能性があります。期限が近い場合や保管条件が守れていない場合は、そのまま使わずに確認してください。
余ったジェルを家族が使ってもいいですか?
処方は、その人の口の中の状態を確認したうえで濃度と使い方が決められています。むし歯や歯周病の有無、人工物の位置、しみやすさは人によって違うため、同じジェルが別の人に適しているとは限りません。また、マウスピースはその人の歯型に合わせて作られているため、別の人が使うと薬剤が歯ぐきに漏れやすくなります。
しみるときは、ジェルの量を減らせばいいですか?
量を減らすことが対応になるとは限りません。濃度や装着時間の調整、知覚過敏を抑える薬剤の併用など、状態に応じた方法があります。しみやすさの考え方については「ホワイトニングはしない方がいい?言われる理由と、見送るべき人の見分け方」で扱っています。
まとめ
ホームホワイトニングのジェルに含まれる過酸化尿素は、口の中で分解して過酸化水素になります。歯科医院での施術で使われるのも過酸化水素なので、最終的に働くものは同じです。違うのは届き方の速さで、自宅用は低い濃度で長い時間をかける設計になっています。
そのため、濃度は単独で意味を持つ数字ではありません。濃度と装着時間はセットで決まっており、濃度だけを上げれば、しみる症状が出やすくなり、続けられなくなる可能性が高まります。続かなければ到達は遠のくので、高いほうがよいという関係にはなりません。
そして、ジェルが歯科医院を通して渡されるのは、同じジェルでも使ってよいかどうかが人によって変わるためです。むし歯や歯周病の有無、人工物の位置、しみやすさ。これらを確認したうえで濃度と時間が決められ、始めてからも調整できます。
比べる軸を値段と濃度だけに置くと、この部分が見えなくなります。何が入っているかと同じくらい、どういう条件で使うかが結果を左右します。
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※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。
・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります



