歯並びに重なりがあり、以前から気になっている。矯正までは踏み切れないけれど、色だけでも明るくなれば印象が変わるのではないか。そう考えてホワイトニングを調べ始める。
すると「歯並びが悪いと色ムラが出ます」という説明に行き当たります。ただ、そこで止まってしまいます。ムラが出るなら意味がないのか、それとも許容できる範囲なのか。 自分の場合にどうなるのかを想像する材料がありません。
結論から言えば、進めること自体はできます。ただし知っておいたほうがよいことが2つあります。ひとつは薬剤の届き方に差が出ること、もうひとつは明るくすることで別の見え方が生まれることです。
ここでは、その2つを整理したうえで、目標をどこに置けばいいのかをまとめます。
歯並びは「色」だけでなく「見え方」にも影響している
最初に押さえておきたいのが、この区別です。
歯が重なっている部分には、光が届きにくくなります。奥まった面や、隣の歯に隠れた部分は影になり、実際の色より暗く見えます。
また、傾いている歯やねじれている歯は、面の向きが周囲と違います。光の反射する方向が変わるため、同じ色でも明るく見えたり暗く見えたりします。
歯が明るく見えるのは、当たった光が歯の中で散らばって戻ってくるためです。奥まった位置にある歯は、そもそも当たる光の量が少なくなります。同じ色の歯を並べても、手前にあるものと引っ込んでいるものでは見え方が変わるのはこのためです。
つまり、いま気になっている「暗さ」の中には、色素によるものと、陰影によるものが混ざっている可能性があります。
この2つは、対処がまったく違う
色素によるものは、薬剤で変えられます。歯の内部にある色のもとに作用させることで明るくなります。
陰影によるものは、薬剤では変わりません。光の当たり方は歯の位置と向きで決まるため、色を変えても影は影のまま残ります。
ここを分けておかないと、「白くしたのに暗い部分が残っている」という受け止め方になります。実際には、その部分はもともと色の問題ではなかったということです。
自分の歯の色が何によるものかについては「歯の黄ばみを取る方法は?取れる黄ばみと取れない黄ばみの見分け方」でも整理しています。
薬剤の届き方が、場所によって変わる
もうひとつが、実際に薬剤が作用する範囲の話です。
重なりの内側には届きにくい
歯が重なっている部分では、隠れている面に薬剤が届きません。表から見える面は明るくなりますが、内側に入り込んだ面はそのままです。
矯正が進んで歯並びが整うほど薬剤が行き渡りやすくなる、という関係があるのはこのためです。
マウスピースの適合が難しくなる
自宅で行う方法では、歯型に合わせたマウスピースを使います。歯並びに凹凸があると、その形状に沿って作ること自体は可能ですが、薬剤が均一な厚みで行き渡るかは別の問題になります。
重なりの深い部分では、マウスピースと歯の間に隙間ができたり、逆に薬剤が入り込まなかったりします。適合については「ホームホワイトニング用マウスピース、市販と歯科専用の違いは?」で扱っています。
ムラが出やすい場所は予測できる
どこにムラが出やすいかは、ある程度あらかじめ見当がつきます。
重なっている歯の、隠れている側の面。 薬剤が届かないため、変化が出ません。
傾いた歯の、奥に入り込んだ面。 同じく届きにくい部分です。
歯と歯が接している面。 歯並びに関係なく届きにくい部分ですが、重なりがあるとその面積が増えます。
始める前にこれらを把握しておけば、どこに差が出るかを想定したうえで進められます。
医院での施術と自宅でのケアで、条件が変わる
歯並びに凹凸がある場合、方法によって届き方の事情が変わります。
医院での施術は、薬剤を歯の面に直接塗る形で進みます。そのため、塗る範囲や量を場所ごとに調整できます。届きにくい部分に多めに置く、逆に薬剤が触れてほしくない場所を保護する、といった対応が取れます。
自宅でのケアは、マウスピースを介して薬剤を保持します。均一な条件を作りやすい反面、凹凸が大きいと隙間や届かない部分ができやすくなります。
どちらが向いているかは凹凸の程度によって変わります。重なりが深い部分がある場合、自分の歯並びを見てもらったうえで方法を決めるほうが結果が読めます。
明るくすると、かえって陰影が目立つことがある
ここが、あまり語られない部分です。
全体が明るくなると、影になっている部分とのコントラストが強くなります。もともと暗く見えていた部分は薬剤では変わらないため、周囲との差が広がるということです。
その結果、重なりの線が以前より際立って見えることがあります。歯の色そのものは明るくなっているのに、歯並びの凹凸は分かりやすくなる。この現象は、事前に知らないと「思っていたのと違う」という受け止め方につながります。
だから、目標の置き方が変わる
これを踏まえると、目標を「できるだけ白く」と置くのは向いていないということになります。明るくするほど、陰影とのコントラストは強くなるためです。
代わりの置き方としては、陰影とのバランスが取れる範囲までという考え方があります。全体の印象を明るくしつつ、凹凸が強調されすぎない地点を目指す形です。
どこがその地点かは、現在の歯並びと色によって変わります。始める前に相談しておくと、目指す範囲を具体的に決められます。
陰影があること自体は、不自然ではない
補足しておくと、歯に濃淡があること自体は自然な状態です。
天然の歯はもともと均一な色ではありません。先端は透明感があり、根元に近づくほど色が濃くなります。隣り合う歯の間にもわずかな差があります。この濃淡があるからこそ、自然な見え方になっています。
すべてを均一に明るくした状態は、かえって作り物のような印象になることがあります。つまり、陰影をゼロにすることが目的ではないということです。
歯並びの凹凸による陰影も、程度によっては同じ範囲に収まります。問題になるのは、明るくしすぎてそのコントラストが強く出たときです。ここが目標を置く位置の問題である理由になります。
矯正を考えている場合の順序
歯並びを変えることも視野に入っている場合、順序が関係してきます。
歯を動かすと、見える面と光の当たり方が変わります。 これまで隠れていた面が表に出てくることもあります。そのため、動かした後のほうが全体を均一に明るくしやすいという関係があります。
薬剤の届き方も同じです。整った状態のほうが、各面に行き渡りやすくなります。
ただし、矯正の予定が決まっていないのであれば、先に色だけを整えるという判断もできます。ホワイトニングで得た明るさは、後から歯を動かしても失われるものではありません。「いつか矯正するかもしれないから待つ」という理由で先延ばしにする必要はない、ということです。
なお、すでに矯正をしている場合は条件が変わります。装置の種類や進み具合によって進め方が違うため、「マウスピース矯正中のホワイトニング|同時にできる理由と注意点」を参照してください。
歯並びはそのままで進める場合の考え方
矯正をしない前提で進める場合、何ができて何が残るのかを整理しておきます。
できること。 見えている面の色は明るくなります。正面から見たときの全体的な印象は変わります。日常的に人から見られるのは主にこの範囲なので、印象の変化としては十分に意味があります。
残るもの。 重なりの内側や陰になる部分の差は残ります。前述のとおり、明るくするほどその差は目立つ方向に進みます。
この2つを踏まえて、部分的に届きにくい場所があることを前提に目標を置くのが現実的です。「全部を均一に」ではなく「見える範囲を整える」という置き方になります。
「見える範囲」はどこまでか
実際に人から見られている範囲は、自分が鏡で確認している範囲とは違います。
鏡を見るとき、多くの人は正面から、口を大きく開けて確認します。しかし日常の会話や写真では、話す・笑うといった動きの中で見えるのは前歯を中心とした限られた範囲です。しかも見る側との距離があり、細部までは見えません。
一方、鏡で気になっている重なりの内側は、その距離では認識されにくい部分にあたります。自分では気になっていても、他人の視点では違う見え方をしているということです。
そのため、判断するときは普段の距離で撮った写真で見比べてみてください。鏡で至近距離から見た印象だけで決めると、目標が実際より厳しくなりがちです。
記録が特に重要になる
歯並びに凹凸がある場合、部位によって変化の出方が違います。そのため、全体の印象だけで判断すると「変わっていない気がする」となりやすくなります。
開始時に、同じ条件で写真を残しておいてください。後から見比べると、どの面は変わってどの面は変わっていないかが分かります。これは次の判断の材料にもなります。
色ムラが出た場合の対応
進めている途中でムラに気づいたときは、原因の切り分けから始めます。
薬剤が届いていないのか、それとも陰影なのか。 この2つは対応がまったく違います。前者であれば進め方の調整で改善する余地がありますが、後者は薬剤では変わりません。
見た目からこれを判断するのは難しいため、確認してもらうのが確実です。届いていない場合は、装着の仕方や時間、方法そのものの変更が検討されます。
避けたいのは、ムラを埋めようとして装着時間を延ばすことです。届いていない場所には、時間を延ばしても届きません。増えるのは負担のほうです。原因の切り分け方については「ホームホワイトニングで白くならないのはなぜ?原因の切り分け方と確認の順序」で整理しています。
よくある質問
前歯だけ重なっています。そこだけ避けることはできますか?
医院での施術であれば、薬剤を塗る範囲をある程度調整できます。ただし、周囲だけを明るくすると、その部分との差はかえって広がります。避けることが解決になるとは限らないため、全体のバランスをどう取るかという相談になります。
ホワイトニングの前に、クリーニングだけでも変わりますか?
変わる可能性は、むしろ高いほうです。歯が重なっている部分や凹凸のある場所は、歯ブラシが届きにくく汚れが溜まりやすいという性質があります。そのぶん表面に着色が蓄積していることが多く、取り除いたときの変化が分かりやすいことになります。
しかも、着色が付いたままではその層が薬剤の通り道をふさぎます。どちらにしても清掃は先に必要なので、まず清掃を受けて、その状態を見てから次を判断するという順序が取れます。
歯並びが悪いと、薬剤が歯ぐきに触れやすいですか?
その可能性はあります。歯の位置が不揃いだと、マウスピースの縁が歯ぐきに当たりやすくなったり、薬剤があふれる場所ができたりします。触れた場合は拭き取って口をすすいでください。 気になる場合は、始める前にその旨を伝えておくと、量や装着の仕方を調整してもらえます。
矯正の予定がありますが、先にホワイトニングをしても無駄になりませんか?
無駄にはなりません。ホワイトニングで変わるのは歯の色で、歯を動かしても色は残ります。ただし、動いた後は見える面が変わるため、改めて整えたくなる可能性はあります。時期が近い場合は、順序を含めて相談しておくと計画が立てやすくなります。
まとめ
歯並びに凹凸があると、ホワイトニングでは2つのことが起こります。
ひとつは、薬剤の届き方に差が出ること。重なりの内側や奥まった面には届かないため、部位によって変化に差が生まれます。
もうひとつは、明るくすることで陰影とのコントラストが強くなることです。もともと暗く見えていた部分は色素ではなく影によるものなので薬剤では変わらず、周囲が明るくなるほど差が広がります。
この2つを踏まえると、目標は「できるだけ白く」ではなく、陰影とのバランスが取れる範囲に置くのが現実的です。見えている面の印象は変えられるため、それでも意味は十分にあります。
矯正を考えている場合は、動かしてからのほうが均一にしやすいという関係があります。ただし予定が決まっていないのであれば、先に色だけを整えても後から失われるものではありません。
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・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります



