前歯の1本だけが、周りと色が違う。年月とともに、そこだけ暗くなってきた。
昔ぶつけて神経を抜いた歯や、大きな虫歯の治療で神経を取った歯では、こうした変化が起こることがあります。そして通常のホワイトニングでは、この色はほとんど変わりません。
そこで出てくるのがウォーキングブリーチという方法です。ただ、値段を調べると医院ごとに表示がまちまちで、自分の場合いくらになるのかが読めません。
ここでは、相場の幅と、総額がどこで変わるのかを整理します。
ウォーキングブリーチは、歯の内側から色を戻す方法
先に、何をする方法なのかを押さえておきます。
ウォーキングブリーチは、神経を失った歯(失活歯)の内部に薬剤を入れて、内側から色を明るくする方法です。歯の裏側に小さな穴を開け、そこから漂白剤を入れて仮のふたをします。薬剤は歯の中に入ったまま作用し、日常生活を送っている間に色が変わっていきます。名前はこの性質から来ています。
使われるのは、過ホウ酸ナトリウムと過酸化水素です。歯の内部に残った有機質を分解することで、色が明るくなっていきます。
通常のホワイトニングとの違いは、薬剤を作用させる場所にあります。
神経を失った歯の変色は、歯の内部で起きた変化によるものです。歯の中に残った血液の成分などが変性し、内側から色を濃くしていきます。外側から薬剤を当てても、色のもとがある場所まで十分に届きません。だから通常の方法では変わりにくく、内側から入れるという発想になります。
薬剤がどこにどう作用するのかについては「ホワイトニングの仕組みは?薬剤が色素を分解する過程と、効かないものがある理由」で整理しています。
相場は1本あたり10,000〜30,000円。ただし表示の単位が2種類ある
値段の話に入ります。
ウォーキングブリーチは保険適用外の自費診療です。国が価格を定めていないため、医院ごとに料金が設定されています。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 費用 | 1本あたり10,000〜30,000円(税込・一般的な相場) |
| 課金の単位 | 歯1本ごと |
| 保険 | 適用外(自費診療) |
※ウォーキングブリーチは自由診療(保険適用外)です。
・治療内容:神経を失った歯の内部に薬剤を入れて色調を改善する処置
・標準的な費用:上記は一般的な相場に基づく目安です(税込)。医院・薬剤・回数により異なります
・主なリスク・副作用:歯根の外部吸収、歯質の強度低下や破折、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:金属による変色、人工物(差し歯・被せ物)、根管治療が適切に行われていない歯などは対象になりません
・効果の感じ方や必要な回数には個人差があります
ここで注意したいのが、表示の単位です。同じ相場の中にいても、医院によって数字の意味が違います。
「1本あたり」の表示
治療が終わるまでの一連の流れを、1本いくらという形でまとめた表示です。薬剤の交換が何回になっても金額が変わらないため、総額が最初に確定します。
「1回あたり」の表示
薬剤を交換するたびに料金が発生する形です。この場合、表示されている金額に回数を掛けたものが総額になります。
回数は歯の状態によって変わるため、この表示だけを見て「安く済みそうだ」と判断すると、実際の総額と食い違うことになります。逆に、回数が少なく済めば一括の表示より抑えられることもあります。
見積もりを取り違えないために
金額を確認するときは、その数字が何に対するものかをあわせて聞いておくと見通しが立ちます。1本の治療全体に対するものなのか、1回の薬剤交換に対するものなのか。ここを取り違えると、見積もりが数倍ずれることになります。
そして「1回あたり」の表示だった場合は、自分の歯で何回くらい見込まれるかまで聞いておくと、総額の幅が把握できます。
漂白の費用だけでは終わらない——前後にかかるもの
もうひとつ、総額を左右する要素があります。ウォーキングブリーチの料金は漂白の処置そのものに対するものであり、その前後に別の処置が入ることがあります。
前にかかるもの
画像検査を含む診査です。歯の内部と歯根の状態を確認しないと、そもそも進められるかどうかが決まりません。
そして重要なのが、根管治療の状態です。ウォーキングブリーチは、神経を取った後の処置(根管治療)が適切に行われていることを前提にした方法です。治療が不十分だったり、時間が経って再治療が必要な状態になっていたりする場合は、先にそちらを行うことになります。
ここが総額に影響します。根管の再治療が入れば、その分の費用と期間が加わります。
後にかかるもの
漂白の期間中、歯には仮のふたがしてあります。目標の色に達したら、最終的な詰め物に置き換える処置が入ります。仮のふたのままでは終わりません。
歯の状態によっては、内部を補強する処置が加わることもあります。
保険と自費が同じ歯の中で分かれる
押さえておきたいのは、同じ1本の歯の治療でも、区分が分かれることです。
根管治療は保険が使える場合があります。一方、色を明るくする処置は審美目的のため自費です。詰め物も、材料によって区分が変わります。
そのため「合計でいくらか」を知るには、漂白の料金だけでなく前後の処置を含めた見積もりで確認することになります。ホワイトニング全体の費用の考え方については「ホワイトニングの値段はいくら?予算別にできることと、総額の考え方を解説」で整理しています。
回数が変わる理由と、期間の見通し
回数が読めないという点について、変わる要因を整理します。
進め方は、薬剤を入れる → 1〜2週間ほど置く → 状態を見て交換するの繰り返しです。目標の色に達するまでこれを続け、通常は2〜5回程度とされています。
回数が人によって違うのは、次のような要因があるためです。
- もとの色の濃さ。 変色が進んでいるほど、明るくなるまでの回数は増えます。
- 変色の原因。 歯の中に残った血液成分によるものか、治療で使われた材料の影響かによって、薬剤の効き方が変わります。
- 神経を失ってからの年数。 時間が経つほど色は歯の組織に定着していきます。
期間の見通しとしては、交換の間隔が1〜2週間で2〜5回ですから、数週間から2〜3ヶ月程度を見込むことになります。
予定が決まっている場合は、この期間を逆算しておく必要があります。回数は診てみないと確定しないため、上限側で見ておくほうが調整しやすくなります。
値段の前に確認すること——対象にならない変色がある
費用を調べる前に、そもそも自分の歯が対象になるかを確認しておく価値があります。
対象にならないものが、いくつかあります。
人工物。 差し歯、被せ物、詰め物は、薬剤で色が変わりません。内部に色素にあたるものを持っていないためです。前歯が差し歯になっている場合、その歯は漂白の対象外で、作り替えという別の話になります。この点については「インプラントがあるとホワイトニングはできない?順序と、すでに入っている場合の選択肢」で整理しています。
金属による変色。 治療で使われた金属の成分が歯に移って黒ずんでいる場合、漂白では対応できません。原因が色素ではないためです。
歯がつくられる時期に取り込まれた変色。 歯の組織そのものに色が入り込んでいるもので、内側から薬剤を入れても十分に変わらないことがあります。
根管治療が適切に行われていない歯。 前述のとおり、これは順序の問題です。先に治療を整えることになります。
見た目だけでは、自分の変色がどれにあたるか判断できません。画像検査を含めて診てもらってから、費用の話に進むのが順序になります。黄ばみや変色の種類の分け方については「歯の黄ばみを取る方法は?取れる黄ばみと取れない黄ばみの見分け方」で整理しています。
知っておきたいリスク
費用と一緒に確認しておきたいのが、この方法に伴うリスクです。
歯根の外部吸収。 頻度は高くないものの、合併症として報告されています。歯根の外側が溶けていく現象で、薬剤の濃度や種類、封入の方法、根管治療の状態が関係するとされています。処置の際に薬剤が歯根側へ漏れないようにする対応が取られますが、可能性としては説明を受けておく項目です。
歯質の強度低下。 歯の内部に薬剤を作用させる以上、歯の組織に影響が及びます。もともと神経を失った歯は水分を失って脆くなりやすく、そこに漂白が加わることで、欠けや破折のリスクが変わる場合があります。
色の後戻り。 一度明るくなっても、時間の経過とともに再び色が濃くなることがあります。永続する処置ではないという点は、費用を考えるうえで押さえておく必要があります。
これらは、進めるかどうかを決める前に説明を受ける内容です。リスクの説明と、自分の歯でその可能性がどの程度あるかを聞いたうえで判断することになります。
かぶせ物にする場合との違い
変色した歯への対応としては、被せ物にするという選択肢もあります。費用を比べる前に、性質が違うという点を押さえておくと判断しやすくなります。
歯を削るかどうか。 ウォーキングブリーチは、裏側に小さな穴を開けるものの、歯の形を大きく変えません。被せ物にする場合は、土台となる歯を削る処置が入ります。一度削った歯は元に戻りません。
費用の発生の仕方。 漂白は、色が戻れば再度行うという形になります。被せ物は、装着後の費用は発生しにくい一方、破損や歯ぐきの変化があれば作り替えという形で発生します。一度で完結するか、間隔をあけて繰り返すかという違いです。
色の安定性。 漂白した歯は時間とともに色が戻る方向に進みます。被せ物の素材そのものは色が変わりにくい一方、周りの天然の歯が変化していくため、時間が経つと色の差が出てくることがあります。
どちらが適しているかは、歯の状態と、その歯に何を求めるかで変わります。両方の説明を受けたうえで決めるのが現実的な進め方です。
よくある質問
保険は使えますか?
漂白の処置は審美目的にあたるため、保険適用外です。ただし同じ歯に対する根管治療は、保険が使える場合があります。同じ歯の治療の中で区分が分かれるということです。
通常のホワイトニングと同時にできますか?
進められる場合があります。1本だけ内側から明るくしても、周りの歯との色の差が残ることがあるためです。ただし順序や間隔は歯の状態によって変わるため、両方を希望する場合は最初に伝えておくと計画が立てやすくなります。
一度白くなれば元に戻りませんか?
時間の経過とともに、色が戻ることがあります。どのくらいで戻るかには個人差があり、変色の原因によっても変わります。やり直す可能性を含めて費用を考えておくほうが見通しが立ちます。
前歯以外でもできますか?
処置そのものは、神経を失って変色した歯であれば対象になりえます。ただし奥歯は見え方が違うため、色の改善を目的に進めるかどうかは相談することになります。
まとめ
ウォーキングブリーチの相場は、1本あたり10,000〜30,000円程度です。保険適用外の自費診療で、料金は医院ごとに設定されています。
金額を見るときに押さえたいのは、表示の単位です。1本の治療全体に対する金額なのか、1回の薬剤交換に対する金額なのか。後者であれば、回数を掛けたものが総額になります。
そして、総額は漂白の料金だけでは決まりません。前には根管治療の状態確認があり、必要なら再治療が入ります。後には最終的な詰め物の処置があります。同じ1本の歯の中で保険と自費が分かれるため、合計を知るには前後を含めた見積もりが要ります。
回数は、もとの色の濃さ・変色の原因・神経を失ってからの年数で変わり、通常2〜5回程度。期間は数週間から2〜3ヶ月を見込むことになります。
費用を調べる前に確認しておきたいのが、対象になる変色かどうかです。人工物、金属による変色、歯がつくられる時期に取り込まれた変色は対象になりません。あわせて、歯根の外部吸収や歯質の強度低下、色の後戻りといったリスクの説明を受けたうえで判断することになります。
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※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。
・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります



