歯科医院でマウスピースとジェルを受け取るとき、注意事項の説明があります。項目は多く、その場では分かったつもりになります。
家に帰って始めてみると、迷う場面が出てきます。磨いてから付けるのだったか、外した後だったか。ジェルはこの量で合っているのか。
注意事項が並んだリストのままだと、どれが結果に効いていて、どれが気にしなくてよいのかが分かりません。全部を同じ重さで抱えることになり、続けるのがしんどくなります。
ここでは、装着する前/装着している間/外した後の3つに分けて整理します。
注意事項は、3つの時間帯に分かれる
ホームホワイトニングの注意事項は、順番に並んだ手順書のように見えます。ただ実際には、時間帯によって効いている先が違います。
| 時間帯 | 気をつけること | 何に効いているか |
|---|---|---|
| 装着する前 | 歯を磨く/ジェルの量 | 色の仕上がり(ムラが出るかどうか) |
| 装着している間 | 飲食しない/噛みしめない | 歯ぐきへの刺激と、マウスピースの寿命 |
| 外した後 | すすぐ/軽く磨く/飲食の時間 | 色の戻りやすさ |
この対応が分かると、優先順位が付きます。色ムラが気になるなら装着前の項目が効いていて、外した後の項目をどれだけ丁寧にやっても、ムラのほうは変わりません。
以下、時間帯ごとに見ていきます。
装着する前——仕上がりを左右するのはここ
3つの時間帯のうち、色の仕上がりに直接効いてくるのが、この時間帯です。
磨いてから装着する
歯の表面に歯垢や食べかすが残っていると、薬剤がその部分に届きません。届いた場所と届かなかった場所ができるため、色ムラの原因になるとされています。
磨く順番は「装着の前」です。外した後にも軽く磨きますが、目的が違います。前は薬剤の通り道を作るため、後は残ったジェルを落とすためです。
色ムラの原因は装着前の清掃だけではありません。ほかの要因については「ホームホワイトニングで白くならないのはなぜ?原因の切り分け方と確認の順序」で整理しています。
ジェルの量は米粒大が目安
歯1本あたり米粒大(1〜2ミリ程度)が目安とされています。マウスピースの、歯の表側にあたる面に置きます。
ここで起きやすいのが「多めに入れておこう」という判断です。量を増やしても、早く白くはなりません。 マウスピースの容量を超えた分は、装着したときに縁から押し出されます。
押し出されたジェルが歯ぐきに付くと、その部分が一時的に白く見えたり、ひりつくような刺激感が出たりすることがあります。多くは時間とともに落ち着きますが、量を守っていれば起きにくいものです。
つまりジェルの量は、速さではなく歯ぐきの負担に効いている項目ということになります。
装着したら、はみ出した分を拭き取る
量を守っていても、装着したときに縁から少し押し出されることはあります。マウスピースの形と歯の形の関係で、どうしても出る場所があるためです。
そこで、装着した直後に、はみ出した分を拭き取ります。指や綿棒で歯ぐきの縁をなぞる程度で足ります。この一手間があるだけで、歯ぐきに触れている時間が短くなります。
量を減らすことと、はみ出した分を拭き取ること。この2つはセットで効く項目です。片方だけでは、歯ぐきに触れる場面が残ります。
ジェルそのものの状態も見ておく
見落とされやすいのが、ジェル自体の保管です。指定された保管の条件と使用期限は、成分が保たれる前提になっています。
ジェルの成分や濃度の考え方については「ホームホワイトニングのジェルとは?成分と濃度の考え方、入手経路の見分け方」で扱っています。
装着している間——気になることの多くは、起きても問題ない
この時間帯は、不安になりやすいわりに、実際には問題にならないことが多くを占めます。
唾液は飲み込んで問題ない
装着していると唾液が出ます。飲み込んでよいのかが気になるところですが、飲み込んでも問題ないとされています。自宅用のジェルに使われる過酸化尿素は、もともと口の中で用いられてきた成分です。
マウスピースの中に唾液が入ることもあります。これも、薬剤が大きく薄まって効果がなくなるというものではないとされています。装着中に口の中で起きることの多くは、想定の範囲に入っています。
飲食はしない、強く噛みしめない
装着中の食事は避けます。噛むことでマウスピースに力がかかるうえ、食べ物とジェルが混ざります。
もうひとつ、強く噛みしめないことがあります。マウスピースは薄い素材でできているため、噛みしめが続くと変形や破損につながります。無意識に噛んでしまう自覚がある場合は、装着する時間帯を見直す材料になります。
途中で外してもかまわない
予定していた時間より早く外したくなることはあります。そのときは外して問題ありません。
装着時間を延ばしても、その分だけ早く進むわけではないからです。この関係については「ホワイトニングの頻度は?目安に幅がある理由と、自分の周期の決め方」で扱っています。むしろ、無理をして続かなくなるほうが結果に効きます。
外した後——この窓が、毎日来る
外した後にすることは3つです。すすぐ、軽く磨く、しばらく飲食を控える。
すすいで、軽く磨く
外したら、水またはぬるま湯で口をよくすすぎます。そのうえで、歯ブラシで軽く磨いて残ったジェルを落とします。
このとき、研磨力の強い歯磨き剤はこの時間帯だけ避けます。薬剤を使った直後の歯の表面は、普段より影響を受けやすい状態にあるためです。強くこする必要もありません。
1〜2時間の飲食制限は、意味が違う
外した後、1〜2時間程度は飲食を控えるのが目安とされています。歯の表面を覆っている膜が一時的に失われ、色が入りやすい状態にあるためです。
ここで押さえておきたいのが、歯科医院での施術の後に言われる「24〜48時間」とは、性質が違うという点です。
医院での施術の場合、その窓は施術1回につき1回来ます。避ける対象と時間の考え方は「ホワイトニング後の食事は何を避ける?色と酸の2つの基準で判断する」で整理しています。
一方、自宅で続ける場合は、この窓が毎日来ます。1回あたりは短いものの、続く期間だけ繰り返されます。
すると、考え方が変わります。我慢する総量の問題ではなく、装着の時間帯を生活のどこに置くかという設計の問題になるからです。
たとえば、夕食を終えてから装着すれば、外した後の1〜2時間は就寝までの時間と重なります。もともと飲食しない時間帯なので、制限を意識する場面がほとんど生まれません。逆に、食事の直前に外す組み方にすると、毎日そこで待つことになります。
同じ注意事項でも、装着の時間帯しだいで、守る難しさがまったく変わります。 続けられるかどうかに効いているのは、意志ではなく、この置き方のほうです。
就寝中に装着する設計の場合は、事情が変わります。外すのが起床後になるため、窓が朝食にぶつかります。ここで取れる形は2つです。起床後すぐに外して身支度の時間を挟み、朝食を後ろにずらすか、朝食の内容のほうを色の薄いものに寄せるか。前者が難しい日は後者、という使い分けで足ります。
いずれにしても、考えるのは「何を我慢するか」ではなく、その日の予定の中で、窓をどこに寄せるかです。
マウスピースは水で洗う
外したマウスピースは、流水で内側のジェルを洗い流します。このとき使うのは水です。お湯は変形の原因になります。
洗った後は水気を切り、ケースに入れて保管します。マウスピースの素材や扱いについては「ホームホワイトニング用マウスピース、市販と歯科専用の違いは?」で扱っています。
しみたときは、やめる前に調整できる
続けている途中で、歯がしみることがあります。ここで「合わなかった」と判断して中止してしまう例がありますが、その前に調整という段階があります。
代表的なのは次の2つです。
装着時間を短くする。 1回あたりの時間を減らします。
1日おきの装着にする。 毎日から間隔を空ける形に変えます。
いずれも、薬剤に触れている時間を減らすという方向です。知覚過敏を抑える薬剤を併用する方法もあります。
そのうえで、数日たっても症状が引かない場合は、続ける前に相談します。しみる仕組みと、症状が出たときの対処については「ホワイトニングで歯がしみるのはなぜ?仕組みと、症状が出たときの対処」で整理しています。
判断を自分だけで抱えないという点は、自宅で進める方法に共通する要点です。この性質については「ホームホワイトニングのデメリットは?「自分で判断する場面が増える」という本質」で扱っています。
注意事項は「どこに効くか」で優先順位が付く
ここまでの項目を、効いている先で並べ直すと次のようになります。
色の仕上がりに効くもの。 装着前の歯磨きと、ジェルを均一に置くこと。ムラが気になる場合に見直す先はここです。
歯ぐきの負担に効くもの。 ジェルの量。多く入れることで得られるものはなく、はみ出す分だけ負担が増えます。
マウスピースの寿命に効くもの。 水で洗うこと、強く噛みしめないこと。作り直しになるかどうかを分けます。
速さには効かないもの。 量を増やすこと、装着時間を延ばすこと。ここに労力をかけても、返ってくるものがありません。
続けやすさに効くもの。 装着の時間帯をどこに置くか。前述のとおり、外した後の制限の重さがここで決まります。
こう並べると、気を配る先を全部同じ強さにする必要がないことが分かります。仕上がりに不満があるときは前半の項目、負担が大きいときは時間帯の置き方、という形で当たる場所が変わります。
よくある質問
歯磨きは、装着の前と後のどちらもしたほうがいいですか?
どちらも行います。ただし目的が違います。前は薬剤が届く状態を作るため、後は残ったジェルを落とすためです。後の1回は強くこする必要がなく、研磨力の強い歯磨き剤はその時間帯だけ避けます。
装着中に水を飲んでもいいですか?
色の付いていない水であれば、大きな影響はないとされています。ただしマウスピースの中に流れ込むと薬剤が薄まるため、飲むなら少量ずつにするか、いったん外すほうが確実です。色や糖を含む飲み物は、装着中は避けます。
ジェルがはみ出して、歯ぐきが白くなりました。
押し出されたジェルが歯ぐきに触れると、一時的に白く見えたり刺激感が出たりすることがあります。多くは時間とともに落ち着きます。次回からジェルの量を減らして様子を見て、症状が続く場合や範囲が広い場合は相談してください。
マウスピースをつけたまま話せますか?
話すことはできますが、慣れるまでは話しづらさを感じることがあります。装着する時間帯を、人と話す予定のない時間に置くと負担が減ります。
外した後、いつから普段の歯磨き剤に戻していいですか?
飲食を控える時間の目安と同じく、1〜2時間ほどが目安になります。その日のうちの次のブラッシングからは、普段どおりで問題ありません。判断に迷う場合は、渡された製品に合わせた目安を確認しておくと安心です。
まとめ
ホームホワイトニングの注意事項は、装着する前/装着している間/外した後の3つに分けると、それぞれ効いている先が見えてきます。
装着する前の項目は、色の仕上がりに効きます。磨いてから装着すること、ジェルの量を米粒大に保つこと。量を増やしても早くはならず、はみ出した分が歯ぐきの負担になります。
装着している間に気になることの多くは、起きても問題ないものです。唾液は飲み込んでよく、多少入っても効果がなくなるわけではないとされています。避けるのは飲食と、強い噛みしめです。
外した後は、すすいで軽く磨き、1〜2時間ほど飲食を控えます。この窓は、医院での施術の「24〜48時間」と違って毎日来ます。だからこそ、我慢の量ではなく、装着の時間帯をどこに置くかで守りやすさが決まります。
しみたときは、中止の前に装着時間を短くする・1日おきにするという調整があります。数日たっても引かない場合は相談してください。
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※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。
・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります



